社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2018.06.29

尾上右近 さん

尾上右近 さん
プロフ

リード

新鋭の歌舞伎役者として注目を浴びる尾上右近さん。この夏、自身初となる翻訳現代劇に主演します。ハードな日々を支える秘訣、そして好奇心の向かう先とは。

人生の行方を模索し、葛藤する青年役。同い年の役柄だ。
「僕自身もまだ人として成長段階。そのなかで一人前の役者として立ち向かっていかなくてはならない。彼のもがきに共感できるし、リアルに演じられると思います」

初めての現代劇だが、歌舞伎とは異なる難しさもある。
「歌舞伎は型があってデフォルメされた鎧で守られているけれど、現代劇にはそれがない。未経験のことに挑戦できるのはうれしい。心で役を演じるところは、歌舞伎と同じです」

昨年から公演が休みなく続く。日々ダイナミックな舞台を務めあげる歌舞伎役者の健康法は興味あるところ。
「健康管理は何もしてないんです。いままで身体から〝調子が悪い〟という声を聞いたことがなくて。もし体調が悪くても舞台に立って、最上の演技を見せるのがプロだと思います。すべてメンタルの問題ですね」

その強いメンタルを支えるのは「人を元気にして、力を与える」という自身の使命感だ。
「病、悩みや苦しみを忘れさせるのが芸の役割。医療とは違った面からですね。それに気づいたのは二十歳こえてからかな。自分のためでなく、人のためならがんばれるから」

自らを修行僧に例えるストイックぶりが印象的だ。ただ最近はオンオフのメリハリもつけようと意識している。
「先月の休演日に、温泉に行ったんです。びっくりするくらい寝て、ゆっくり温泉浸かって…。心からホッとして幸せでした(笑)。次の日の元気の入り具合には驚きましたね」

端正に語る姿は〝好青年〟そのもの。だがその世間の印象を裏切る任侠、不良の役に挑んでみたいとも。最近祖父である名優・鶴田浩二さんの作品を見て感銘を受けたとか。

「わかりやすい芝居をせず、ちょっとした表情や目のニュアンスで感じ取らせる祖父の美学。男らしいなぁと。自分もいずれあんな演技ができたら」

今年初めには浄瑠璃の名跡「清元栄寿太夫」も襲名し、役者と二足のわらじに。将来は「タブーにあえて触れる〝R指定歌舞伎〟や、他ジャンルとのコラボで歌舞伎本来の力を発信していきたい」と目を輝かす。

「今日できないことでも、明日はできるかもしれない。今の自分に対する悔しい気持ちと、明日の自分への期待。それがいまの僕を動かす力ですね」

文:浜口 恵美子 写真:吉川 信之(機関誌「済生」2018年7月)
ヘアメイク:西岡達也(ラインヴァント)
スタイリスト:三島和也(Tatanca)
衣裳協力:Connecter Tokyo(03-6447-7289)

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『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル~スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ~』

『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル~スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ~』

足を負傷したイラク戦争の帰還兵の青年・エリオット。あることで心に傷を持つエリオットは、ヴァーチャルなネット空間で様々な問題を抱えた人々と出会う。サイトを通じて心を通わせながらそれぞれが人生を取り戻していく、愛と希望の物語。2012年にピューリッツァー賞戯曲部門賞を受賞した珠玉の物語を日本初上演。

●作:キアラ・アレグリア・ヒュディス
●翻訳・演出:G2
●出演:尾上右近、篠井英介、南沢奈央、葛山信吾、鈴木壮麻、村川絵梨/陰山 泰
2018年7月6日(金)~7月22日(日)紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA(大阪公演あり)

 

尾上右近 さん