第150回 やっぱり暑い
こんなに毎日暑いと、つい暑さについて書きたくなる。
暑さ、寒さには鈍感な方だ。自分では気にしてなくても、他人から「今日は暑いですね」と言われて初めて、「そうか、ちょっと暑いか」と感じる。これは幼少時代に身に刷り込まれた感覚のためだ。
昭和20年代から30年代にかけて北陸の高岡市という地方都市で幼少期を過ごした。夏は暑く、冬は寒いのは当たり前だという考えで、暑さ、寒さを気にせずに毎日を送った。
当時クーラーなんて、どの家庭にもなかった。扇風機は経済的にゆとりのある家にはあったが、貧しかった私の家にはなかった。それでもなんの不満もなく、快適に夏を送っていた。
記憶に残る扇風機は、よく利用した銭湯の脱衣場の天井に設置された大型扇風機だ。湯上がりに冷えたコーヒー牛乳を飲みながら、上から吹いてくる風に当たると、幸せな気持ちになった。
こんな酷暑だから、連日、熱中症患者の発生が報道される。自分は熱中症になるはずがないと思っている人も多いだろう。暑さ、寒さに強いと自慢している私も、その一人だった。
しかし、本欄第126回で書いたように20年以上前に熱中症になりかかったことがある。炎天下の多摩川沿いのウォーキングだったから、無謀な行動だったのかもしれない。
歩き始めるときは体調が良かったし、後頭部を帽子で覆っていたから大丈夫と思っていたが……。1時間半を過ぎたごろから体に異常を感じ、目の前がくらくらしてきたものだ。
この時の経験は、私にとって大変貴重なものになっている。過信は禁物という教訓、熱中症の初期症状や罹患したときの対処方法を学んだ。今でも熱中症の危険信号を少しでも感じると、大事に至る前に対処している。
環境省で地球温暖化対策の仕事をしていたとき、ロシアの担当者から「ロシアにとって地球温暖化は、農作物の収穫増やシベリア開発促進になり、プラスだ」と言われてしまった。トランプ米国大統領は、地球温暖化対策に懐疑的だ。
しかし、地球温暖化は確実に人類の生存さえも危うくさせている。世界が一致協力をして取り組めば、まだ大丈夫だと思うが、タイムリミットは刻刻と迫っている。
すみたに・しげる
1946年富山県高岡市生まれ。69年東京大学法学部卒業、厚生省に入る。自治省、総務庁、在英日本大使館、厚生省社会・援護局長などを経て2003年環境事務次官に就任。08年5月から済生会理事長。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、富山国際大学客員教授なども務めている。著書に「環境福祉学の理論と実践」(編著)「社会福祉の原理と課題」など多数。