社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2020.05.01

田中 泯 さん

田中 泯 さん

表現の自由を求め続けるダンサー。
情熱を持って、北斎に挑む

独創的なダンサーとして国内外に知られる田中泯さん。映画界でもほかにはない存在感を示し、75歳を迎えた今も大活躍中です。今回、臨んだのは、同じく独自のスタイルで世界に名をとどろかせた絵師・葛飾北斎。映画について、そして、田中さんにとっての「踊り」について伺いました。

「表現の自由が奪われていた時代にあって、時流をものともせず、世間の意表をつく風景画で成功した人物。彼の自由を追い求める気持ちが、あの有名な波の絵に現れていると感じます」と、北斎の魅力を語る。

 自身もジャンルでくくられた踊りを超え、誰も真似できない自己表現を求めてきた。その情熱には通じるものがあると信じて演じたという。「今回、『晩年の北斎をやって』と言われて、それがほかの誰かではなく、自分だったことは素直にうれしかった。今作がみなさんにとって、北斎に対する好奇心のきっかけになればいいと思います」

 一番好きな北斎の作品は「北斎漫画」。4千近くにおよぶ人物のユーモラスなポーズや表情などが収録された絵手本集を、踊りの参考にもしているのだとか。「あそこまで人間の身体に対する追求をした画家は後にも先にもいません。つま先の向け方、ひざの曲げ方といったポジションはずいぶん勉強させてもらいました」

 田中さんにとっては、立つことも歩くことも踊り。「自分の手足を細部にわたって自分が納得いくように使うこと、身体と一体感を持って生きることが僕にとっての踊りなんです」と言い、自分の身体へのあくなき探求のため、30年以上前から山梨県の農村で畑仕事をする生活をベースにしている。「農作物も瞬間、瞬間を生きていて、その懸命な姿が踊りのお手本になることもあります。そんな作物の命をいただきながら、この先も一生踊り続けたいですね」

文:みやじまなおみ 写真:吉川信之(機関誌「済生」20205)
スタイリスト:九(Yolken) ヘアメイク:横山雷志郎
衣裳クレジット:
シャツ ¥24,000(Y’s BANG ON!/ヨウジヤマモト プレスルーム)
その他スタイリスト私物
問い合わせ先:
ヨウジヤマモト プレスルーム 03-5463-1500
株式会社ワグ 03-591-1500

『HOKUSAI』

『HOKUSAI』©2020 HOKUSAI MOVIE

©2020 HOKUSAI MOVIE

「冨嶽三十六景」などで知られる江戸時代の天才絵師・葛飾北斎の謎多き生涯を柳楽優弥(青年期、壮年期)、田中泯(老年期、晩年期)で映画化。舞台は、幕府に表現の自由が奪われていた江戸後期。その圧政に筆で抗い、齢70を超えてあの有名な「神奈川沖浪裏」にたどり着く。90歳で没するその日まで筆を握り続け、描いた「三つの波」の秘密に迫る物語。

●監督:橋本一 
●企画・脚本:河原れん
●出演:柳楽優弥、田中泯、阿部寛、永山瑛太、玉木宏、青木崇高、瀧本美織、津田寛治ほか
2021年公開予定
配給:S・D・P
©2020 HOKUSAI MOVIE

田中 泯 さん


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