済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
「春はあけぼの」と清少納言は、言った。
最近は、5時頃には目が覚めてしまう。立夏となっても、この時間は、清少納言が描いた春と同じように段々と雲が白んできて、清々しく美しい。
都会では水平線や地平線から太陽が覗(のぞ)かせる瞬間を見ることは困難だ。初めて日の出を見たのは、小学3年生の夏の臨海学校のときだった。
4時頃に起こされて富山湾に面した砂浜へ歩いた。眠りから完全には覚めず、重い足を引きずって歩く児童は、みな渋々だった。
しかし、静寂の世界の中で水平線から赤々とした太陽が見えた瞬間、雰囲気はがらりと変わった。全員が息を飲んだ。神を見たかのような気持ちになった。大人であれば、思わず手を合わせたかも知れない。
最近の子どもたちは、日の出を見ることが少なくなった。文科省の外郭団体「青少年教育振興機構」の調査でも分かる。中学2年生で「太陽が昇るところや沈むところを見たことがないか、ほとんどない」生徒が、半数を超える。
日の出を見て、感動する機会を持たない。代わって家の中で、スマホでゲームに興じる。液晶画面で日の出や夕焼けを知る。
この調査では、自然との触れ合いが少なくなると、道徳心や正義感が弱体化することも実証的に明らかになっている。自然との触れ合いが、人間の倫理や感性を育むのだ。スマホの画面では到底、無理だ。
若い頃、クロード・モネの名画「印象・日の出」をパリの美術館で見た。印象派の幕開けとなる作品である。
モネの日の出と私が臨海学校のときに感動した日の出とは、全く違っていた。前者の日の出は、工場地帯の中から昇り始め、周囲がまだ薄暗く、都会のアンニュイ(倦怠感)が漂う。これに対して後者は、太陽が自然の中の中心的存在として明るく、活力に満ちていた。
太陽は、そのときの環境や観察者によって異なる印象を与える。
モネの「印象・日の出」は、当時の芸術観からは完全な異端だった。発表直後から「つまらない絵だ。壁紙の方がましだ」という酷評を受ける。画壇から追放される恐れもあった。モネの勇気ある行動だった。
西洋美術史に新たなページを切り開いた作品は、「印象・日の出」というまさにぴったりの作品名だ。モネは、そこまで読んだのだろうか。
日の出は、新しい出発の象徴だ。
1946年富山県高岡市生まれ。69年東京大学法学部卒業、厚生省に入る。自治省、総務庁、在英日本大使館、厚生省社会・援護局長などを経て2003年環境事務次官に就任。08年5月から済生会理事長。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、富山国際大学客員教授なども務めている。著書に「環境福祉学の理論と実践」(編著)「社会福祉の原理と課題」など多数。