社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)
済生春秋 saiseishunju

2013.12.09 第11回 農業の新しい可能性

 12月1日、冬の訪れを感じさせる寒い日だった。千葉県柏市にある柏青果セットセンターを視察した。ここは「JA全農ちば」が平成18年から生活協同組合コープネットより委託を受けて、全国から運ばれる野菜や果物のセット業務を行っている。
 全面的に機械化し、全館低温管理して鮮度を保ち、傷みを防いでいる。視察者にもマスク、帽子の着用を始め手洗いや服のほこりを払うことを徹底させて、衛生管理に注意を払っている。
 最近の消費者のニーズは、多様化、高度化している。コープネットでは生産農家に出向き、農作業や農作物などを現地で直接調査し、安心・安全で味、価格面で適切な作物を仕入れる。最近人気がある作物として奈良県五條市の西吉野産直産組合の「富有柿(ふゆうがき)」がある。甘さ、色が優れ、代々の農家に生産が引き継がれている。大分県のサツマイモである「甘太(かんた)くん」は、糖度が通常のものよりはるかに高く、おいしいと評価が高い。

 TPPへの参加などによって、農業は国際競争力が求められるが、工夫を凝らせば、新たに発展するチャンスが大いに秘められている。

 12月7日、同じ千葉県の千葉市で開催された「福祉と農と医療の融合」と題するシンポジウムで、基調講演をさせてもらった。私は、適切な仕事に就けない障害者、引きこもりの若者、元受刑者などのためには、農業が有望な分野であることを話した。
 しかし、農業は簡単ではない。専門的な知識や技術が求められ、素人には高い壁がある。暑い夏の除草など作業はきつい。販売価格は高くない。販路を見つけることが困難。
 これらを克服しようと一生懸命に挑戦している団体がいくつかある。私が応援している埼玉県飯能市のNPO「たんぽぽ」は、その一つである。会長の桑山和子さんは、精神障害を有する人や長期に引きこもりをしていた若者の働く場を作るために農業を始めた。競争力を持つため、固定種(その土地で伝統的に栽培されてきた種子)による自然に優しい農法を取り入れている。収入を上げようと飯能駅の近くにイタリアンレストランを開業した。収穫した新鮮な野菜を使ったサラダバーが売りである。10月23日には上田清司埼玉県知事が訪れ、激励している。

 桑を育て、桑茶を製造、粉末にしてパンやクッキーに入れる。薬草を作って製薬メーカーに売る。キャベツ、ニラ、ニンニクを栽培して手作り餃子を作る。障害者等による面白いチャレンジが全国で展開中である。

炭谷 茂

すみたに・しげる

1946年富山県高岡市生まれ。69年東京大学法学部卒業、厚生省に入る。自治省、総務庁、在英日本大使館、厚生省社会・援護局長などを経て2003年環境事務次官に就任。08年5月から済生会理事長。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、富山国際大学客員教授なども務めている。著書に「環境福祉学の理論と実践」(編著)「社会福祉の原理と課題」など多数。