社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)
済生春秋 saiseishunju
2014.02.07

第13回 風邪は万病のもと

 700年前に吉田兼好が書いた『徒然草』は、私の愛読書である。現代の日本人にも通用する教訓が詰まっている。
 木登りの名人は、登りのときには黙って見ていたが、降り始めて地面に戻る間際になって「気をつけろ」と注意したという文章は、教科書に掲載されているので、有名である。これは真理である。私は、何事でも終了間際になって心の中で「兼好が言っているようにここは最大限注意して」とつぶやく。もし、徒然草を読んでいなかったら、このようにはしていない。

 徒然草第117段も真理を突いている。友とするのに悪い者として「病気をしない強健な人」を挙げている。これも納得できる。
 定年を過ぎても健康自慢、体力自慢の人がいる。大学時代から早朝のジョギングを欠かさず、休日はテニス、フルマラソン出場と余念がない。このような人に会うと、私などは必ず「おい、顔色が悪いな。風邪でもひいたのか」と挨拶代わりに言われる。すると体力に自信がない私は、本当に病気になったような気になる。
 フランスの哲学者アランは、『幸福論』の中で、人に対して「顔色が悪い」と決して言ってはいけないと書いているではないか。

 体力に自信がない私は、最近流行しているインフルエンザには警戒している。うがい、手洗いを徹底し、人ごみは避けている。今のところは感染から逃れているが、風邪のほうは1月下旬にひいてしまった。
 4半世紀前にお仕えした下条進一郎厚生大臣の健康法は、風邪をひかないように注意することと話されていた。当時ちょっと意外だったけれども、高齢になった今、「そのとおりだなあ」と思う。
「風邪は万病のもと」という。風邪をこじらせて肺炎を起こして亡くなる高齢者は少なくない。風邪をひくには必ず原因がある。日常の不摂生の積み重ねである。だから、風邪をひかないようにすれば、健康にも良い結果をもたらすだろう。 
 今度の私の場合も、思い当たる。ストレスと疲労の蓄積が原因である。

 健康のためには、日常の地道な行為の積み重ねも効果的であるようだ。

炭谷 茂

すみたに・しげる

1946年富山県高岡市生まれ。69年東京大学法学部卒業、厚生省に入る。自治省、総務庁、在英日本大使館、厚生省社会・援護局長などを経て2003年環境事務次官に就任。08年5月から済生会理事長。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、富山国際大学客員教授なども務めている。著書に「環境福祉学の理論と実践」(編著)「社会福祉の原理と課題」など多数。

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