社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

済生春秋 saiseishunju
2014.03.10

第14回 地球の危機

 私は、富山県高岡市に生まれ、高校時代まで暮らした。高校時代に昭和38年の豪雪を経験した。「サンパチ豪雪」と称され、歴史に残る被害を残した。経済は、大打撃を受けた。雪は、各家の2階まで積み上がった。
 私の家は、頑丈ではなかった。深夜寝ていると、天井の方からみしみしと音が聞こえ、心胆を冷やした。屋根の雪降ろしは、1日おき。屋根に上がると、一晩で屋根一面が真っ白だった。太陽の光を反射した純白は、美しかった。こんな時でも私は、3キロ離れた高校までオンボロ自転車で通学した。無謀な経験だった。

 福井県庁に出向していた昭和56年にも豪雪を経験した。北陸地方では38年以来の豪雪だった。県内の山間の集落は孤立し、生活維持に危機を生じた。自衛隊の災害出動が行われた。
 私は、教育庁総務課長の職にあった。業務に高校、図書館、美術館などたくさんの建物の管理があった。鉄筋コンクリート造りの建物だったが、空前の積雪で倒壊の恐れがあった。しかし雪降ろし作業に当たる人手は、高い賃金を払う民間に流れたため、県庁の予算では集められなかった。そこで私たち県庁職員が、高いビルの屋上に上って連日、雪降ろしをした。
 作業は夕方遅くまでかかった。そのあと皆で酒を飲んだ。越前の名酒は、疲れを癒やしてくれた。

 だが、今年は全く様相を異にする。関東地方は、大雪で交通に大混乱が生じた。反対に、富山、石川、福井は、降雪が本当に少ない。私は、1月、2月に数度富山に行ったが、春のような温かさである。誰もが、「こんな天候は、経験したことがない」と不気味がる。

 この異常気候は、地球温暖化が急ピッチで進行している結果である。関東に住む人は、近来にない寒冷で「地球温暖化はどこ吹く風か」と考えたくなるが、温暖化によって気流、海流が大変化しているためである。
 私は、北極の氷床やシベリアの凍土の現状に非常に深刻な状態を読み取る。すべての国が根本的な対策を講じないと、人間を含めた地球の生命の危機は、すぐそこにある。

炭谷 茂

すみたに・しげる

1946年富山県高岡市生まれ。69年東京大学法学部卒業、厚生省に入る。自治省、総務庁、在英日本大使館、厚生省社会・援護局長などを経て2003年環境事務次官に就任。08年5月から済生会理事長。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、富山国際大学客員教授なども務めている。著書に「環境福祉学の理論と実践」(編著)「社会福祉の原理と課題」など多数。

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