社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

済生春秋 saiseishunju
2023.07.31

第126回 熱中症との向き合い方

 7月中旬の日曜日は、猛暑だった。身体がなまってきたので、午後3時過ぎにウオーキングに出掛けた。
 3時でも相当に暑かった。できるだけ日陰を歩くようにした。1時間歩いたところで目黒区の大鳥神社に着いた。自動販売機で100円のミネラルウオーターを買って飲んだ。半分ほど一気に飲んだ。これほど体が水分を求めていたのだ。
 水分補給をすると、元気が回復した。再び歩き始めた。でも暑さは和らがない。体はやや重く、歩く速度は落ちた。方々を回って、目黒不動の境内の樹木の下で再び水分補給。10分程度の休憩後、重くなった足で1時間弱後に帰宅。猛暑の中の3時間のウオーキングだった。
 
 20年前も30度を超える夏の日、休日には決まってウオーキングに出掛けた。近郊の自然の中を20キロ程度の長い距離を歩くことが楽しかった。首都圏には楽しめるウオーキングコースが、ガイドブックでたくさん紹介されている。
 猛暑の日、多摩川沿いへウオーキングに出掛けた。堤防上に整備されたウオーキングコースを滔々(とうとう)と流れる多摩川を見ながら歩いた。普段はウオーキングを楽しむ人は多いが、その日は、暑さのためか、人影はなかった。
 堤防上は照りつける太陽を遮るものがない。全身に夏の日差しを受けた。体力と精神力を付けるには絶好の機会だと思い、歩みを止めなかった。
 1時間半くらい過ぎたころだろうか。めまいを感じた。これまで経験したことのない感覚である。目の前も暗く感じた。
 気のせいだろうか、このまま進むべきか迷った。「もしかして熱中症かも」と頭をよぎった。堤防下に自動販売機があった。スポーツドリンクを買い、脇道に座り、一口飲んだ。冷たい水が体にしみ込んだ。するとどうだろうか。身体から異常な感覚がスーと消えていった。熱中症の入り口だったのだ。

 この体験は、現在でも生きている。熱中症は、体力自慢の人でも起きるものだ。熱中症はどんな時に起きるのか。どんな症状か。対処方法も知ることができた。
 今年は猛暑である。熱中症患者発生のニュースが絶えない。そんな中でも、熱中症対策には自信を持って、私の唯一の運動であるウオーキングに精を出している。やはり体験は最大の教科書だ。

炭谷 茂

すみたに・しげる

1946年富山県高岡市生まれ。69年東京大学法学部卒業、厚生省に入る。自治省、総務庁、在英日本大使館、厚生省社会・援護局長などを経て2003年環境事務次官に就任。08年5月から済生会理事長。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、富山国際大学客員教授なども務めている。著書に「環境福祉学の理論と実践」(編著)「社会福祉の原理と課題」など多数。

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