済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
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8月下旬、フィンランドに障害者関係の仕事で出張した。フィンランドは、福祉国家論の研究をライフワークにする私にとって一度は訪れたい国だった。
北欧4カ国は、福祉国家の建設で世界の先頭を行く。学生時代から、当時出版された北欧の福祉国家に関する文献で勉強した。スウェーデンの経済学者ミュルダールや小野寺百合子の著書などは、有益だった。その後、スウェーデンとノルウェーには長期間滞在し、福祉国家の実態を確認できた。
50年前から日本人は、北欧の福祉国家を冷ややかに見る向きがある。「税負担が重過ぎ、企業は国外に逃げる」や「手厚い福祉に依存し、勤労意欲が湧かない」が、代表的である。北欧国内でも同種の批判がある。しかし、大多数の国民の支持の下、時代の変化に応じて修正を加えながら、一貫して福祉国家の道を歩いてきた。福祉国家は、経済を活性化させ、国民生活を豊かにさせることを実証してきた。
北欧4カ国は、それぞれ個性がある。フィンランドは、他の3カ国に比べ経済力が劣る。農林業が主産業である。著名な企業にノキアがあるが、携帯電話事業は、すでにソフトバンクに売却している。フィンランド人からは、「ロシアの景気停滞の影響をもろに受け、失業者が増えている」と頻繁に嘆きを聞いた。失業率は、9%と増加する一方だ。私の関心事項は障害者対策であったが、どうやら国は、若い失業者の雇用対策を優先せざるを得ない状況だった。
この中にあって、ヘルシンキから列車で2時間のタンペレというフィンランド第2の都市にある「テトリ・リー」は、私が目指している障害者の望ましい働き方を実現していた。
テトリ・リーの売り上げの60%を稼いでいるのは、金属加工製品の製造である。製品数が1700種で、90%が輸出されている。失業者に混じって障害者も働く。通常の労働者と同様な仕事ぶりで、給料も一般の労働者に劣っていない。民間企業で実力をつけたササリネン代表は、明るい性格で働きやすい職場作りに意を注いでいる。
フィンランドは、環境、教育、文化に力を投入している。都市では、建築物の高度制限、石畳の道路の維持、電線の地中化を全面的に実施、100年以上前にタイムスリップしたようだ。幾多の戦乱を乗り越えた国民は、辛抱強く、温かい。治安も上々。大学院教育まで無料で、教育水準は、世界のトップクラス。
経済力は、弱いが、これらが福祉国家の支えになっているのだろう。
1946年富山県高岡市生まれ。69年東京大学法学部卒業、厚生省に入る。自治省、総務庁、在英日本大使館、厚生省社会・援護局長などを経て2003年環境事務次官に就任。08年5月から済生会理事長。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、富山国際大学客員教授なども務めている。著書に「環境福祉学の理論と実践」(編著)「社会福祉の原理と課題」など多数。