社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)
済生春秋 saiseishunju
2016.04.12

第38回 ホテルの選択

 仕事や私用でホテルに宿泊することが多い。最近、ホテルの予約が取りにくくなった。2~3年前であれば、前日でも予約が取れたものだ。日本の隅々まで外国人観光客の影響が出ている。日本人でもあまり訪れない僻地(へきち)で外国人観光客に出会うとびっくりする。日本の治安がいいと評価されているからだろう。

 私のホテルの選択基準がある。第1に優先するのは、交通の便が良いこと。長旅で疲れて駅を降りたとき、駅に隣接したホテルだとホッとする。地方都市に夜遅く着くと、駅の外は真っ暗で、タクシーも止まっていないことがある。こんな町の場合は、歩ける距離のホテルでないと困る。
 第2に、値段。安いほどいい。眠るだけの短い時間の利用の場合は、特にそうである。しかし、最近、大都市の安いホテルに泊まると、外国からの団体観光客が泊まっていて、深夜まで声が響き、休めないことがある。
 第3になって初めて質になる。超高級なホテルは、設備、サービスともそれだけのことはある。公務でロンドンの五つ星のクラリッジスホテルに1週間、宿泊した。荘厳さは感じたが、居心地は、普通だった。プラザ合意で有名なニューヨークのプラザホテルのレストランで食事をしたことがあったが、味は分からなかった。従業員から客の品定めをされているようで、落ち着かなかった。格式よりもリラックスできる方が良い。

 できればこの三つとも備わっているホテルが理想的だ。これに合致するホテルとして私が推薦できるのは、帯広市の「北海道ホテル」である。料金は手ごろである。ホテルの設計は、著名な設計グループ「象設計集団」が行った。芸術的でかつ癒やしを与える。サービスもしっかりしている。

 ホテルでは色々な失敗をする。鍵を部屋に忘れて締め出されることは、誰もが経験する。最近はカード式の鍵が多いが、カードに部屋番号が記載されていない場合があるので、自分の部屋が分からなくなることがある。

 海外で部屋の中に置いた物が盗まれたと、よく耳にする。イギリスでパソコンを盗まれた著名な経済学者は、「パソコンよりも締切の迫った論文の原稿が痛い」と私に嘆いたものだ。「従業員の仕業に違いない」と言っていたが、戻ることはない。
 40年前、ニューヨークの安ホテルで部屋に強盗らしい人物に入られそうになった。夜、休んでいると、ドアのノブがガタガタする。合鍵を持っていたらしい。幸いチェーンをしていた。日本語で大声を出して事なきを得た。
 海外では、信用のできるホテルを選択しないと怖い目に遭う。

炭谷 茂

すみたに・しげる

1946年富山県高岡市生まれ。69年東京大学法学部卒業、厚生省に入る。自治省、総務庁、在英日本大使館、厚生省社会・援護局長などを経て2003年環境事務次官に就任。08年5月から済生会理事長。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、富山国際大学客員教授なども務めている。著書に「環境福祉学の理論と実践」(編著)「社会福祉の原理と課題」など多数。

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