社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)
済生春秋 saiseishunju
2020.06.01

第88回 絵本が紡ぐ夢

 最近、小さい子どもは、新型コロナのために家で親と過ごす時間が多くなった。部屋に閉じこもったままだと子どものストレスが、たまる。
 子どもに絵本を読ませたり、親が読み聞かせたりするのは、良い過ごし方だ。
 私は、家が商売を営み、5人兄弟だったから、親は子どもに構ってなんかいられなかった。私も、小さいころからひとりで本を読む方が好きだった。金太郎などの昔話や消防自動車などを扱った絵本を読んだ記憶は、残っている。
 絵本は、貴重だったから、数冊の絵本をボロボロになるまで繰り返し読んでいた。きっと絵本で幼い子どもなりの夢を描いていたのだろう。

 親の立場になったとき、子どものために絵本をたくさん買った。当時でも日本昔話シリーズなど素晴らしい絵本が安価で入手できた。
 どの国にも絵本がある。イギリスで暮らしていたとき、子どもが学齢前だったので、街の本屋に売られていた絵本をかなり買った。今もほとんど保管している。
 日本でもよく知られているパディントン・ベアや機関車トーマスのシリーズは、大人が読んでも面白かった。新書版程度の小さな絵本だが、絵が美しく、愛着が持てるキャラクターだ。
 日本にない発想のストーリーで、イギリスの自然環境、産業革命、国民性が反映されている。絵本とはいえ、大人も胸にじんとくる。パディントン・ベアもトーマスも今でも世界中の子どもたちに愛されているのも当然だろう。

 先日、高校の同級生で弁護士の塩谷睦夫君から、お嬢さんの「しおたにまみこ」さんの偕成社から出版された「やねうらべやのおばけ」という絵本をいただいた。
 しおたにまみこさんの2作目になるが、1作目の「やねうらおばけ」と同様に、ストーリーは子どもたちに想像を膨らませる。「こんなおばけであれば、会ってみたい」と。
 木炭鉛筆だけで細密画のように描かれる絵は、絵本の常識を破っている。幼い子どもたちを美の世界に誘う。

 読書は、人間形成のための重要な糧である。人生で最初に出会う本である絵本は、人生に大きな影響を与える。

炭谷 茂

すみたに・しげる

1946年富山県高岡市生まれ。69年東京大学法学部卒業、厚生省に入る。自治省、総務庁、在英日本大使館、厚生省社会・援護局長などを経て2003年環境事務次官に就任。08年5月から済生会理事長。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、富山国際大学客員教授なども務めている。著書に「環境福祉学の理論と実践」(編著)「社会福祉の原理と課題」など多数。

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