社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)
済生春秋 saiseishunju
2021.03.01

第97回 みんなちがって みんないい

「みんなちがって みんないい」
 ダイバーシティの大切さが明確に伝わってくる素晴らしい言葉だ。
 金子みすゞの詩にあるこの言葉に出合ったのは、平成9年に山口県で開催された第6回全国ボランティアフェスティバルであった。大会のテーマとして「つたえたい ボランティアのハート みんなちがって みんないい」だった。大会の趣旨にぴったりだと感心した。
 それを機会に金子みすゞの作品を読むと、すべての詩が、心にしみ通ってくる。大正から昭和にかけて27年という短く、幸せ薄き人生が投影されている作品ばかりだ。

 最近の元総理の発言によって日本のダイバーシティの著しい遅れが、世界から注目された。東京オリンピック・パラリンピック大会の理念が「ダイバーシティとインクルージョン」だからなお一層、大会組織委員会のトップの人の発言は、いかがと思う。
 しかし100年ほど前に日本の一人の若い女性が、琴線に響く言葉でダイバーシティの尊さを訴えている。

 日本ではダイバーシティ尊重は、まだまだこれからの課題だ。高齢者が「外国語で分からん」と言うだけでは済まされない。
 自治体が主催するある会議で有名大学の教授が、「最近言われるダイバーシティやインクルージョンは何か分からない」と発言されたのには、あ然とした。元総理よりもかなり若く、学生に人文科学系の学問を教え、英語に熟達した人でもこの状況だ。
 ダイバーシティの理解は、小さいころからの体験が重要だ。外国生活をすると、家族で最も早く現地の人になじむのは、子どもである。学校に通学すると、肌の色は関係なく、子どもたちの世界に飛び込んでいく。現地の子どもたちにも抵抗感がない。

 本欄で昨年6月に「絵本が紡ぐ夢」で新進絵本作家の「しおたにまみこ」さんの絵本を紹介した。先ごろ第3作目の「たまごのはなし」という絵本をブロンズ新社から出版された。
 アーモンド、カシューナッツ、ピーナツなどのナッツが、相手の姿をけなし合って喧嘩(けんか)しているのを聞いたたまごは、「みんな同じだったらけんかしないのかな。それではナッツすべてミキサーに入れて砕けば、みんな同じになる」と提案する。
 絵本では正解を示さない。これでいいのかと読者の子どもたちに考えさせる。
 子どもたちがダイバーシティを考えるには絶好の教材になる。絵も黒鉛筆画で絵本の常識を破る。この絵本の存在自体がダイバーシティと言えそうだ。

炭谷 茂

すみたに・しげる

1946年富山県高岡市生まれ。69年東京大学法学部卒業、厚生省に入る。自治省、総務庁、在英日本大使館、厚生省社会・援護局長などを経て2003年環境事務次官に就任。08年5月から済生会理事長。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、富山国際大学客員教授なども務めている。著書に「環境福祉学の理論と実践」(編著)「社会福祉の原理と課題」など多数。

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE