社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

済生春秋 saiseishunju
2013.06.11

第5回 ソーシャルファームを作る

 ソーシャルファームの仕組みに出会ったのは、8年前である。そのころ私は障害者、難病患者、スラム居住者、ホームレスなどが社会から排除され、孤立している現場によく出会った。
 この問題の解決には仕事が必須である。「人を差別するのをやめて、地域で仲良く暮らそう」という人権啓発活動は、”百年河清を待つ”ことに等しい。現代社会では人のつながりは仕事によって形成される。

 しかし、障害者にはなかなか仕事がない。精神障害者で就労している人は17%。知的障害者は52%であるが、仕事の種類が自分の適性に合わない、収入は1万円に届かないなどの問題がある。
 長期失業中の若者、刑務所から出所した人なども同様であるが、障害者と違い公的助成を受けた福祉事業所などはない。民間企業に就職先を見つけなければならないが、現状は厳しい。

 イタリア、ドイツ、イギリス、スウェーデンなど大半のヨーロッパ諸国では、ソーシャルファームが成果を挙げている。ソーシャルファームは障害者、刑務所出所者などが働く場をビジネス手法で経営する。

 私は、それが日本でも必要であると考えている。休日には全国各地に出かけ、障害者や保護者、社会福祉関係者などと話し合う。6月1日は栃木県野木町の社会福祉法人パステル、8日は札幌市で知的障害者の通所事業所の集会を訪れた。どこでも高い関心が集まる。野木町では理事長の石橋俊一さん、札幌市では通所授産施設長の佐藤春光さんが中心になってどんな仕事がソーシャルファームに向くか、談論風発であった。
「ひまわり油がいい」「エゾシカをもっと有効利用できないか」など、成功しそうなアイデアが続出である。

 八代英太さんは、長年ラオスで障害者、貧困者などへの援助活動を草の根から行っているが、「持続的に発展させるためにソーシャルファームはどうだろうか」という相談を先日いただいた。途上国でも期待できる手法である。

炭谷 茂

すみたに・しげる

1946年富山県高岡市生まれ。69年東京大学法学部卒業、厚生省に入る。自治省、総務庁、在英日本大使館、厚生省社会・援護局長などを経て2003年環境事務次官に就任。08年5月から済生会理事長。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、富山国際大学客員教授なども務めている。著書に「環境福祉学の理論と実践」(編著)「社会福祉の原理と課題」など多数。

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