社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

済生春秋 saiseishunju
2024.03.06

第133回 廃用性症候群からの脱出

 2月初め、6日ばかり風邪をこじらせて家で寝ていた。身体を動かすのは食事やトイレのときくらい。食欲がなく、おかゆとリンゴ程度ですませた。人生で初めての経験だった。
 1週間経って外出すると、身体がふらつき、まっすぐ歩けない。足に力が入らない。脚の筋肉がやせ細ったとはっきり分かる。
 これは廃用性症候群ではないか、生前の母を思い出した。90歳を過ぎた母が体調を崩して1カ月間入院し、退院したときには歩行困難だった。病気は治ったが、寝たきりになってしまった。寝たままだと筋肉が衰えてしまうのだと思い知らされた。

 私は筋肉を取り戻すために、スクワットをゆっくりと始めた。慣れないことで、20回過ぎると腰や太ももが痛くなった。少し休んで再開。50回行なった。夕方も50回行なった。このときは最初から太ももに痛みが残っていたが、無視した。
 翌朝は太ももやふくらはぎに痛みがあったが、やはり50回、夕方50回を強行した。1週間経つと効果をはっきりと実感した。足元がしっかりし、ふらつかなくなった。筋肉も復活したのだ。

 100歳を迎えた村山富市元総理大臣の近況を新聞で読んだ。15年くらい前に大分県でのシンポジウムで同席したことがある。シンポジウム終了後はレストランでフランス料理をご一緒した。経験に裏付けられた高い識見や高潔な人格に感銘を受けた。
 当時もお元気だったが、現在も散歩やスクワットを欠かさないという。これで筋肉を鍛えておられるのだろう。
 筋肉は、お金と違って、使っても減らず、逆に増えていく。私もスクワットを今も朝夕50回ずつ続けている。

 頭脳も廃用性症候群に陥るらしい。昔は夜空を見れば、88の星座名はスラスラ言えた。今はゆっくりと考えないと出てこない。
 そこで記憶力も毎日鍛えている。約1700の市町村の名前や場所、名所などを覚える。新しく登場した名前も多く、苦労している。1万以上の英語表現の暗記にも挑戦している。こんなことを毎日繰り返していると、頭脳も成長してくれるかも。

 何事も使わないと衰える。隙間時間を見つけては筋肉と頭脳をせっせと鍛えている。この努力が決して無駄にはならないと信じながら。

炭谷 茂

すみたに・しげる

1946年富山県高岡市生まれ。69年東京大学法学部卒業、厚生省に入る。自治省、総務庁、在英日本大使館、厚生省社会・援護局長などを経て2003年環境事務次官に就任。08年5月から済生会理事長。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、富山国際大学客員教授なども務めている。著書に「環境福祉学の理論と実践」(編著)「社会福祉の原理と課題」など多数。

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