社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)
済生春秋 saiseishunju
2020.09.01

第91回 断捨離の前に

 国鉄時代からのファンだから、スワローズファン歴は60年以上に及ぶ。
 36年前に神宮球場に便利な所に引っ越したので、仕事が終わった後、頻繁に外野席でのナイター観戦に行った。ビールを飲みながら応援していると、嫌な仕事のストレスは吹き飛んだ。私と同じようなサラリーマンをよく見た。
 当時のヤクルトスワローズは、負け試合が多かったが、試合結果は、どうでもよかった。
 それがガラリと変わったのは、平成元年秋に野村克也が監督に就任してからだ。データ重視の野球は、素人にも「野球に心理学や統計学が役立つ」と野球の見方が変わった。
 それよりも感心したのは、他球団で戦力外となった選手の長所を引き出して活躍させたことだ。

 断捨離という考えには、引かれる。身の回りのあふれる物を捨て去り、煩わしい人間関係を断ち、すっきりしたいという衝動にいつも駆られる。
 しかし、不用になった物も、使い方によって価値を発揮する。次々に新製品が発売され、便利になるが、古い物でも十分に役に立つ。
 特にモノが不足していた時代に育った人間は、モノを大切にする習慣が染みついている。
 最近は、モノを購入しないで、保有しているモノを最大限活用する方針を取っている。無駄な消費、使い捨て、大量の廃棄物への抵抗で、便利さや効率性を犠牲にしても省資源、環境への貢献や自分の価値観に忠実に従うためだ。

 名刺は、昭和56年から頂いたものをすべて保管してきた。5万枚は、超えているだろうか。会った日、用件、相手の人物の特徴等を記載した名刺を見ると、35年前であっても思い出せる。その人と久方ぶりに会うとき、大変有益である。相手もびっくりする。
 パソコンに名刺のデータをインプットできるが、私の場合は、本物の名刺でないと、記憶として固定しない。時代の進歩からかなり取り残された頭脳になったのか。

 本も、できるだけ保管している。昔読んだ本を再読すると、記憶が新たになる。最近の新刊本は、売れ行き至上主義で内容が薄っぺらく感じてしまう。パソコンでも本が読めて便利だが、ブルーライトで目が大変疲れるうえ、頭に入らない。これも完全に時代遅れになったためだろうか……。

炭谷 茂

すみたに・しげる

1946年富山県高岡市生まれ。69年東京大学法学部卒業、厚生省に入る。自治省、総務庁、在英日本大使館、厚生省社会・援護局長などを経て2003年環境事務次官に就任。08年5月から済生会理事長。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、富山国際大学客員教授なども務めている。著書に「環境福祉学の理論と実践」(編著)「社会福祉の原理と課題」など多数。

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