済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
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新型コロナウイルスの検査には、ウイルスの有無を調べる「PCR検査」「抗原検査」、過去の感染の有無を調べる「抗体検査」の3つがあります。それぞれの特徴についてみていきましょう。
「感度」とは、検査して“正しく陽性(感染している)と分かる割合”です。真陽性率ともいいます。例えば100人感染者がいるとして、検査で90人が陽性と分かるならば、感度は90%となります。
「特異度」とは、検査して“正しく陰性(感染していない)と分かる割合”です。真陰性率ともいいます 。例えば感染していない人が100人いるとして、検査で98人が陰性と分かるならば、特異度は98%となります。
なお、感染してから何日経過したかや、検体(検査する血液や体液)に含まれるウイルス量によって感度は変わりますが、新型コロナのPCR検査の感度は最高でも70%ほどと考えられています。特異度はおおよそ99%程度のようです。
「できない」と考えておいた方がよいでしょう。感度や特異度は、検査をする材料(検体)の状態 や、陽性と判断する基準値(カットオフ値といいます)によっても変わってきます 。ごく一部の病気を除いては、感度100%・特異度100%の検査をすることはできないのです。
残りの30%は、本当は感染しているのに陰性となってしまう人の割合です。これを「偽陰性」といいます。一方、特異度が99%の場合、1%余ります。この1%は、本当は感染していないのに陽性となってしまう人の割合です。これを「偽陽性」といいます。
それでは、ここで問題です。例えば下記の条件で検査を行なった場合、陽性の的中率(検査の信用度ともいえます)はどれくらいでしょうか? 計算してみましょう。
・人口:1400万人(おおよそ東京都の人口)
・感度:70%
・特異度:99%
・感染率:人口の0.12%(東京都の10万人当たりの感染者数より仮の感染率を作成)
答えは約7.8%です。約1.2万人しか感染者を割り出せません。偽陰性の人も約5,000人出ます。
一方で、約14万人もの人々が偽陽性と判定されてしまうのです。
Step1
感染率が人口の0.12%ということから、1400万人のうち感染している人数を計算できます。
14,000,000 × 0.0012 = 16,800人……①
人口 × 感染率 = 感染者数
次に1400万人から①を引くと、感染していない人の数が計算できます。
14,000,000 – 16,800 = 13,983,200人……②
人口 – 感染者数 = 非感染者数
では、ここから①と②の人を分けて全員検査してみましょう。
Step2
①のうち、まず感度70%の検査で本当に陽性と判定される人数は、
16,800 × 0.7 = 11,760人……③
感染者数 × 感度 = 真陽性者数
本当は感染しているのに陰性(偽陰性)となってしまう人数は、
16,800 – 11,760 = 5,040人
感染者数 – 真陽性者数 = 偽陰性者数
となります。
Step3
一方②のうち、特異度99%の検査で陰性と分かる人数は、
13,983,200 × 0.99 = 13,843,368人
非感染者数 × 特異度 = 真陰性者数
本当は感染していないのに陽性(偽陽性)となってしまう人は、
13,983,200 – 13,843,368 = 139,832人……④
非感染者数 – 真陰性者数 = 偽陽性者数
検査が終わった段階で、陽性と判定される人数は③と④なので、その総数は、
11,760 + 139,832 = 151,592人
真陽性者数 + 偽陽性者数 = 陽性と判定された総人数
となります。陽性と判定された人のうち、本当に陽性の人の割合を求めればよいので、
(11,760/151,592) × 100 ≒ 7.8% ※小数点第二位を繰り上げ
と計算できます。
この結果から分かることを整理してみましょう。
1.疑わしくない人まで対象に含めて検査人数が多くなると、偽陽性の人数が多くなってしまう(真陽性〈本当に陽性〉の人数よりも多い!)。
2.偽陽性の人数が多くなると、検査の信用度が下がってしまう。
検査を受けて陽性といわれても、その人が本当に陽性である確率が約7.8%だとすれば、はたして検査をする意味があるのか、分からなくなってしまいそうです。
そもそも、病気が疑われる人に行なうのが検査です。検査を受けたい人は誰でも受けられる……ではなく、検査を受ける必要がある人が全員受けられる、という体制が求められているといえるでしょう。
1984年鹿児島大学医学部卒業、1989年同大学院医学研究科生理系修了(医学博士)。1991年同第2内科入局。2007年鹿児島市立病院消化器科科長、2009年済生会鹿児島病院内科部長を経て、2015年に同院長に就任。専門は渡航医学、感染症一般、消化器内科。日本渡航医学会認定医療職・評議員、日本感染症学会専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医。
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