済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
左上から時計回りに
泉学先生、小村賢祥先生
萩原繁広先生、岡部太郎先生
人食いバクテリアとも呼ばれ、発症すると手足に壊死を起こし、死に至ることもある劇症型溶血性レンサ球菌(溶連菌)感染症。今年8月に発表された国立感染症研究所のデータによると、国内発生数はすでに去年の報告数(273件)を大きく上回り、すでに過去最多(291件)となっています。
栃木県済生会宇都宮病院では、昨年、劇症型溶血性レンサ球菌(溶連菌)感染症の症例が1件報告されています。そこで、同病院総合内科・主任診療科長の泉学先生、総合内科・医長の小村賢祥先生、総合内科の岡部太郎先生、臨床検査技術科・臨床検査感染制御認定微生物検査技師の萩原繁広先生に、発症件数が増えている原因やその対策について伺いました。
劇症型溶血性レンサ球菌(溶連菌)感染症は、「溶連菌」により引き起こされる感染症です。通常は、溶連菌に感染しても無症候のことが多く、ほとんどは咽頭炎などの感染症にとどまります。一般的な溶連菌による感染症は、風邪とよく似た症状で、小・中学生によくみられます。しかし、まれに皮膚、筋肉組織などに溶連菌が侵入し、筋肉周辺組織の壊死を起こすことがあります。これが、劇症型溶血性レンサ球菌(溶連菌)感染症です。持病もなく元気に過ごしていた人が、ある日突然手足の痛みを訴え、翌日には身体を支えてもらわないと動けない状態になり、病気の勢いに治療が追いつかないこともあります。
萩原先生は「咽頭炎を起こす溶連菌と劇症型感染症を起こす溶連菌は全く同じ菌。侵入経路や基礎疾患の違いなどが考えられますが、なぜ劇症型が生じるかは不明です」と説明しています。
岡部先生は「感染経路としては、皮膚、軟部組織以外には考えにくいですね」と見解を述べています。
また、今年急速に劇症型溶血性レンサ球菌(溶連菌)感染症の発症件数が増えている原因について、泉先生は「新たな感染者が増えているのではなく、病気の知名度が上がってきたことと、これまで敗血症性ショックなどの診断名がついていた例が正しく診断されるようになったからではないでしょうか」と推測しています。
小村先生によると、咽頭炎を起こした溶連菌が劇症化するという症例を経験したこともなく、そのような報告もみていないとのこと。「劇症型溶血性レンサ球菌(溶連菌)感染症は、予防線が張れないのが正直なところです。症状はまず痛みと腫れのほか、発熱や嘔吐がみられることもあります。急速に進行する痛みなどの異変に気づいたらできるだけ早く受診することが大切です」と話しています。