「思い出を残したい」緩和ケアの患者さんの歌が完成
福井市の福井県済生会病院緩和ケア病棟に入院している患者さんが、故郷の思い出を残したいと作詞し、それに音楽療法士が曲をつけました。2人で一緒に作り上げた「九頭竜川の歌」。病室での演奏の様子です。
がんで入院している富田貞夫さん(78)は、ベッドの上で胸をよぎる風景の数々を詩にしたためていました。昔、仲間と鮎釣りをしたこと、桜の舞い散る様子、福井を代表する九頭竜川の荒々しさなど……「♪荒島山に降る雨雪は あばれ九頭竜の源で 大野盆地の恵み川」と始まる「九頭竜川の歌」は、4番にまで及びました。
その詞に曲を付けることにしましたが、体の痛みや吐き気がある中での曲づくりは思うようには進みませんでした。そうした中、当院の音楽療法士・柴田麻美さんが、体調や気持ちを細かく気遣いながら手助けし、富田さんが伝えたい思いを少しずつ作品に仕上げていきました。
音楽療法士は日本音楽療法学会が認定する資格です。医療知識はもちろん演奏技術も必須で、音楽を通して患者さんができることを見つけ、実現をサポートながら療養に役立ててもらいます。
「北島三郎さんの演歌が好き」という富田さんらしい雄大なメロディーの曲は、8月に完成。月に一度、病棟で行われるフルートコンサートで奏者に演奏してもらい、他の患者さんにも披露することができました。
富田さんは「思いを込めて作ったものをたくさんの人に聞いてもらう夢が叶った」と穏やかに話しています。
福井県済生会病院済生記者:宮下 祥恵