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2020.04.01
頭蓋骨の内側にあるくも膜と脳の表面を覆う軟膜との間には、くも膜下腔というスペースがあり、脳脊髄液を満たしています。くも膜下腔の中では、下の図のように脳神経や太い脳血管が走っています。脳神経と脳血管がくも膜下腔でぶつかり合うことはまれなことではありませんが、たまたま神経の弱い部分に当たったり、当たり方が強かったりすると、非常に強い痛みを引き起こすことがあります。
舌咽神経は喉の動きや喉の奥・耳の一部の感覚、味覚の一部などをつかさどっています。 くも膜下腔で脳血管が当たることにより、この神経がつかさどる領域に感じる発作的な耐えがたい痛みが、舌咽神経痛です。
非常にまれな病気で、患者数は三叉神経痛の50分の1程度で、100万人に数人程度の割合しかいません。痛む場所は、喉や舌の付け根のあたりから耳にかけての領域です。扁桃腺の周囲や舌の奥など(トリガーゾーン)に刺激が加わると痛みが誘発されるため、会話や食事などの際に発作的に痛みが生じます。その際、神経反射によって失神や心停止、けいれんを起こしてしまうことがあります。
神経は電気信号によって情報伝達する、絶縁体に包まれた電線に例えられます。血管が当たって強く圧迫され続けると絶縁がうまくいかず、「ショート」のような現象を起こすことがあります。この状態が痛みとして大脳に認識されます。
ただし、痛みの発生のメカニズムは完全には解き明かされていません。また、まれに腫瘍など、別の病気により神経痛を生じている場合もあります。
三叉神経痛の治療と同様に、まずはカルバマゼピン(抗てんかん薬)などによる薬物治療を行ないます。薬が効かない場合や、副作用などにより使えない場合は、舌咽神経を圧迫している血管を移動させる手術を検討します。
「早期発見」というよりは、「早期診断」が重要です。そうでないと、つらい期間をいたずらに長くしてしまいます。
舌咽神経痛には「普段はしびれた感じもないのに、突然激痛が走る」といった特徴があります。喉や耳の痛みなので、脳神経外科や脳神経内科にかかるという考えがなかなか浮かばないかもしれませんが、こういった病気があるということを知っておくことが重要です。
加齢とともに動脈硬化が進んだ脳血管は、長くなって曲がりくねり、脳神経を強く圧迫する要因の一つとなります。そのため、動脈硬化を抑えるような食生活・生活習慣を心がけることが、ある程度予防につながる可能性はあります。しかし、舌咽神経痛そのものの確実な予防法はまだ分かっていません。
解説:勝田 俊郎
唐津病院
脳神経外科部長
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