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2022.08.31
肥厚性幽門狭窄症は、「幽門(ゆうもん)」と呼ばれる胃の出口の筋肉が厚くなって狭くなり、母乳やミルクなどの内容物が通過しにくくなる病気です。
主に生後2週間から2カ月頃の赤ちゃんに発症します。赤ちゃんの約0.1~0.2%(1000人に1〜2人)にみられ、男児に多く、男女比は4:1です。また、兄弟姉妹(双子を含む)に肥厚性幽門狭窄症があると、発症する可能性が高くなります。
なお、幽門の筋肉が厚くなる原因については、胃の神経細胞の異常などさまざまなことが推測されていますが、正確にはまだ分かっていません。
肥厚性幽門狭窄症があると、胃の内容物が幽門から十二指腸に流れにくくなるため、胃にたまった母乳やミルクを吐くようになります。初めのうちは1日に1、2回吐く程度で、吐き方も口からタラっとこぼれるくらいですが、次第に回数や量が増え、最終的には飲むたびに噴水のように大量に吐くようになります。何も飲まなければ吐くことはほぼありません。
吐いて胃が空っぽになると空腹感があるので、赤ちゃんは吐いた後でもすぐに母乳やミルクを欲しがることが多いです。しかし、飲むたびに吐くため、徐々に脱水症状でぐったりしてしまい、体重も減っていきます。
おなかを丁寧に触診すると、へそのやや右上の部位に、厚くなった幽門の塊に触れることがあります。診断には超音波検査が有効で、厚くなった幽門を確認できると、肥厚性幽門狭窄症であると確定します。超音波検査以外には、X線検査が診断の助けになることもあります。
脱水症状がみられる場合や、血液検査で電解質などの異常があれば、まずはしっかりと点滴をしてその治療をします。
その後、手術(粘膜外幽門筋切開術)により、厚くなった幽門の筋肉を切り開いて狭窄部を広げます。手術後は半日から1日で母乳やミルクを飲めるようになります。手術の傷痕も目立たないことがほとんどです。
手術以外の治療法として、硫酸アトロピンという薬を使って厚くなった幽門の筋肉を緩める内科的治療もあります。しかし、手術に比べて効果は不確実で、母乳やミルクを飲めるようになるまでに時間がかかるため、手術をできるだけ避けたいという希望がある場合などに行ないます。ただし、効果がなければ手術になります。
上記を踏まえ、手術と内科的治療のどちらを選択するかは、担当医とよく相談して決めましょう。
赤ちゃんが生理的に母乳やミルクを吐くことはよくありますが、飲んだ量のすべてを吐くことは少なく、通常は体重もしっかりと増えていきます。しかし、肥厚性幽門狭窄症の場合は、飲んだ量のほぼすべてを噴水のように吐くことが多く、赤ちゃんが元気でもそのような吐き方であれば、医療機関(小児科か小児外科)を受診しましょう。脱水症状(不機嫌、唇の乾燥、おしっこの回数が減るなど)がある場合は急いで受診してください。
また、頻繁に吐き、元気がない、体重が増えない、あるいは吐いたものに赤色や緑色が混ざるような場合は、肥厚性幽門狭窄症を含め何らかの病気が隠れている可能性があるため、一度受診してください。
残念ながら発症を予防する方法はありません。早期発見が大切なので、肥厚性幽門狭窄症を疑う症状が出現したら早めに医療機関を受診しましょう。その場合、医師の診察を受けるまでは、吐くのを防ぐために、赤ちゃんが母乳やミルクを欲しがっても飲ませるのを控えるようにしてください。
解説:磯浦 喜晴
泉尾病院
小児科 医長
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