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2021.01.13

水いぼ(伝染性軟属腫)

water wart

解説:千葉 幸英 (加須病院 小児科科長)

水いぼはこんな病気

水いぼ(伝染性軟属腫)は皮膚のウイルス感染症です。皮膚は外から病原微生物(病原性の細菌やウイルス、真菌)が入り込まないようにするためのバリアの機能があります。水いぼはこのバリア機能がまだ十分でない幼児期の子どもに多くみられます。伝染性軟属腫ウイルスが、手を介して目に見えないような小さい傷に入り込んで感染した結果、軟属腫(いぼ)を形成します。このいぼの中にウイルスが潜んでいて、つぶれたいぼを触った手で、身体のほかの場所を触ることで、その場所でまた感染を起こし、いぼを作ります。ほかの手のひらと足の裏以外の身体のありとあらゆる場所にうつります。特に胸の横側や脇下、肩から肘にかけての腕の内側などの皮膚と皮膚のこすれが生じる場所では、いぼがたくさんできやすいです。

いぼは通常2~3mmの大きさですが、1cmを超えることもあります。表面はつやつやしており、光沢がかってみえます。乾燥肌の子ども、アトピー性皮膚炎がある子どもは皮膚のバリア機能がもともと低く、いぼが広範囲に多数出現する傾向があります。その後感染したウイルスに対する免疫が働くようになり、多くは半年~1年程度で消えて治っていきます。しかし、まれに3年以上残る場合もあります。

水いぼの症状

基本的にはかゆみ、痛みはなく無症状です。まれにいぼの周辺が乾燥して湿疹ができるとかゆみの原因になりますが、かゆみの程度は通常強くありません。

水いぼの検査・診断

多くの子どもが典型的な経過をたどるため、通常は検査をせず、問診と診察で診断します。判断がつかない場合、いぼをとって顕微鏡を使用して診断を行ないます。

水いぼの治療法

自然に軽快する感染症であり、治癒後の後遺症もないため積極的に治療を行なうことについては議論が分かれています。即効性があり効果が確実な飲み薬・塗り薬はありません。いぼの摘除(摘出して取り除くこと)など医療的処置という手段もありますが、特に必要性を理解できない子どもには、恐怖心を強く与えてしまう可能性があります。顔面の目立つところにあり、整容的観点とは別の問題(いじめにあう、本人が非常に気にしているなど)がある場合は精神的な負担が懸念されるため、積極的に治療を検討したほうがよいでしょう。その場合にはかかりつけの医師に相談をしてください。

早期発見をしなければならない病気ではありません。入浴中に気づいたらあった、着替えを手伝っている最中に見つけたという場合が多いです。なんとなくポリポリかいている場所を見て、発見することもあります。急いで受診する必要はありませんが、経過観察を行なうか、摘除を含め積極的に治療していくか、方針をかかりつけの医師に相談しましょう。

伝染性軟属腫ウイルスは接触感染によって感染が拡大します。➀病巣を触った手指、➁病巣を触った手指により汚染された環境(ドアノブ、遊具など)、この二点からの感染が主なため、感染予防には小まめな手洗いと、環境衛生の維持が一番重要です。
その先にある、水いぼ固有の予防方法は、大きく二つに分かれます。一つは、かかってしまったいぼからほかの子どもに感染させない、自分の身体のほかの場所への感染をさせないという方法(能動的感染拡大防止)。もう一つは、まだかかっていない子どもをいぼから守る(積極的感染予防)。この二つです。

まず、いぼが露出部(洋服で隠れない場所)に存在しているときは、なるべく包帯や耐水性ばんそうこうなどで覆います。こうすることで手指がウイルスに汚染される頻度を減らし、気づかない環境汚染が抑制できることから、結果として感染拡大を防止することにつながります。
皮膚バリア機能が低い乾燥肌の子どもや、アトピー性皮膚炎の子どもは保湿剤を使用することで、バリア機能の一部を強化することが期待できます。中でもアトピー性皮膚炎がある子どもは、慢性的にかゆみがある場合が少なくないために、ひっかき行為によりウイルスが手指により付着しやすいということがあります。アトピー性皮膚炎のかゆみを抑える手助けをする内服薬がありますので、かかりつけの医師に相談するとよいでしょう。

まだかかっていない子どもをいぼから守る手段としては、バリア機能がそもそも低い子どもには持病の治療を行なうことがバリア機能向上につながるため、重要であるといえます。また相撲・柔道などのコンタクトスポーツを行なう場合は、周りの大人たちが肌と肌が直接触れ合う可能性のある露出部に、いぼがないかを積極的に確認するとよいでしょう。

プールの入水は大丈夫?

この能動的感染拡大防止、積極的感染予防の両観点からこれまで時々問題となってきたのが、「水いぼの子どもがプールに入ってよいか?」という問題です。つまり、入水時における露出部が増えることに加え、特に幼児期の子どもは皮膚と皮膚との直接的な接触を完全には避けられないため、感染リスクが高まることが想定されます。そのため、そうした状況下で水いぼに罹患している子どものプールへの入水に関して、どのように対応していけばよいかという疑問が生じます。

現在の医学的対応の統一見解としては、「保育所における感染症対策ガイドライン2018」が厚生労働省より出ています。この中で「入水制限は不要。ただしタオル、浮き輪、ビート板などを介してうつすことがあるため、これらを共用することはできるだけ避ける。」となっています。またアトピー性皮膚炎の子どもには入水後のバリア機能低下をサポートするため保湿剤の使用が勧められています。

現在(2020年12月時点)、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止対策の観点から、プールを含め子どものさまざまな生活面で制限がかかっていますが、水いぼの予防といった観点のみからは、プールは条件が許せば入水可能といえます。

解説:千葉 幸英
加須病院
小児科科長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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