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2014.03.19
アレルギーにかかりやすい体質の小児は、乳児期早期から乳児湿疹・アトピー性皮膚炎に始まり、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・花粉症などを発症します。これらの発症は、遺伝による要因が大きく、さらに環境による要因が関係します。すべての子どもが、この順で発症するとは限りませんが、多くの患者さんが経験するこれらの現象を「アレルギーマーチ」と呼んでいます。最近、乳児期初期の湿疹(皮膚バリア障害)からアレルギー反応(アレルゲン感作)が始まり、アレルギーマーチに発展する症例の報告が増えています。乳児期初期の湿疹をいかに最小限に治療・予防してアレルギーマーチを食い止めるかが重要です。
ここでは、主なアレルギー症状である、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息についてそれぞれ解説します。
異物が体内に入り込むことを防ぐ、皮膚のバリア機能が弱いことが原因で起こります。さらに、アレルギー反応を起こしやすい体質の人ほど、症状は重くなります。皮膚で起こるアレルギー炎症が、さらに皮膚のバリア機能を弱くするという悪循環に陥ります。
症状は、慢性的に強い皮膚の炎症を繰り返すというものです。かゆみを伴い、赤くて、ブツブツ、ザラザラ、カサカサした皮膚症状(湿疹)を繰り返します。
治療法は、他のアレルギー疾患と同様、ステロイド外用薬(2歳以上はプロトピック軟膏)
を塗るなど、アレルギー炎症をおさえることが大切です。また、アレルギー反応・免疫力をおさえることに加えて、他のアレルギー疾患と違い、保湿により皮膚を強く丈夫にすることが可能です。
親がアトピー性皮膚炎や他のアレルギー疾患を持ち、アレルギー体質が遺伝している可能性が高い乳児は特に注意が必要です。生後早期から保湿をしたり薬を塗ったりするなど、湿疹の予防を心がけましょう。
乳児の皮膚症状を敏感に察知しましょう。皮膚に、かゆみを伴い、赤く、ブツブツ、ザラザラ、カサカサした症状が見られる場合には、スキンケア効果があり、アレルギー炎症をおさえる薬をしっかりと塗り続けましょう。また悪化する要因は何かを探ることと、症状が現れていなくても、現れる前に継続的に薬を塗ることが大切です。
小児アレルギーで最近一番増えているのが食物アレルギーと、誤食によるアナフィラキシーで、社会問題にもなっています。ある特定の食物を食べる、接触する、吸入することで2時間以内(多くは30分以内)に皮膚、粘膜、消化器、呼吸器で症状が起こります。具体的には、かゆみ・じん麻疹、腹痛・嘔吐、せき・呼吸困難、血圧低下・ショック状態などが生じます。症状が重い場合は死亡することもあるので、注意が必要です。
治療法としては、症状を誘発する食物を除去する(食べない)ことが原則です。ただし、除去・除去解除の判断は、医師の指示に従いましょう。自己判断は危険なことがあります。
また、食物アレルギーに関してよく誤解がありますが、以下に関して注意することが大切です。
・症状が出ない程度に食べておく。
・湿疹(皮膚のバリア機能障害)は積極的に治しておく。
・過剰な除去をしない(妊娠中・授乳中の母親、本人への離乳食開始は6カ月以降に遅らせると、却って弊害が残る)。
・血液検査の数値だけで食べてはいけない・食べられないと判断しない。
実際に食べてみて症状が出たことがあるかが一番大切です。血液検査の数値だけで除去の対象を判断していると、余計に食べられなくなってしまうので、必ず専門医に相談してください。負荷試験(実際に食べてみる検査)や栄養バランスに配慮した代替食の指導が必要なことがあります。
症状を誘発する食品は、食べないことが原則です。あわせて、誤食の予防対策を本人や周囲の人に徹底してもらいましょう。また、アナフィラキシーの症状の重症度(Grade1~5で分類します)を理解しておくことが必要です。最も軽度のGrade1で服用する、抗ヒスタミン薬を常備しておきましょう。Grade3になりそうなら、ためらうことなくアドレナリンの自己注射薬(自分で注射する薬)を筋肉注射しましょう。普段から準備しておくことが大切です。
遺伝と環境による要因が影響して発症します。気管支粘膜が過敏なことにより、アレルギー性炎症、気道収縮が起こります。
気管支粘膜が反応する要因は、
・ウイルス(ライノウイルス、RSウイルス)、マイコプラズマ、クラミジアなどの感染
・冷たい・乾燥した空気
・アレルゲン(ホコリ、ダニ、カビ、ペットなど)
・煙(タバコ、空気汚染など)
・精神的なストレス
などがあります。
症状は、せき、痰、喘鳴(息をするとゼーゼーと鳴る)、呼吸困難になるほどの発作を繰り返すというものです。発作が治まると、一見治ったように見えますが、実は気管支粘膜ではアレルギー炎症がくすぶっているので、治療を打ち切るかどうかは慎重に判断してもらいましょう。治療を打ち切るかどうかの目安は、ランニングをしてもせきや喘鳴、呼吸困難の症状が現れるなど、運動後に喘息が起こらないか、呼吸機能で末梢気道の閉塞がないか、呼気中のNO(一酸化窒素)濃度が正常かなどを参考にします。
治療法は、主に2種の薬を服用します。喘息が起こらないようにコントロールや予防する薬である、「吸入ステロイド」や「ロイコトリエン受容体拮抗薬」などの抗アレルギー性炎症薬と、発作止めや気管支拡張薬である「β2刺激薬」などです。症状に応じて、薬の量をだんだんと増量していく「ステップアップ法」や、薬の量を減らしていく「ステップダウン法」など、重症度に応じた使い方を定めたガイドライン(GL2012)があるので、その基準に応じて治療します。
親がアトピー性皮膚炎や他のアレルギー疾患を持ち、アレルギー体質が遺伝している可能性が高い乳児や、せきが長引く、走るとせきが増える、息が苦しくなるような症状が見られる幼児は、呼吸機能測定と、呼気中のNO濃度測定を行いましょう。
薬の服用を続けるなど、予防治療を継続することが重要です。小学生になる頃には、自己管理ができるようにしましょう。呼吸困難発作が夜、昼ともに起こらなくなること、強い運動をしてもせき、喘鳴が起こらないこと、呼吸機能、呼気中のNO濃度、気道過敏性の正常化を目指しましょう。正常値の測定は以下を指標とし、正常値でない場合は、外出の中止や休息を取るなど対策を取りましょう。
1 呼吸機能
・十分息を吸い込んだ状態で、極力息を早く出したときの息の速さであるピークフロー値がいつもより低くなっていないか
・肺の中に肺活量の50%、25%残っているときの息の速さが極端に下がっていないか(V50、V25測定)
2 気道過敏性
・メサコリンPC20などを吸入し、気管支の過敏さが高くなっていないか
末廣 豊
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