社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2014.08.06 公開
2025.05.27 更新

多発性硬化症

multiple sclerosis

監修:矢部 勇人 (松山病院 脳神経内科 主任部長)

多発性硬化症はこんな病気

多発性硬化症とは、視神経、脳、脊髄といった中枢神経系のあらゆる箇所に病変ができる病気です。症状は、病変ができる部位によって異なるために、視力障害、しびれなどの異常感覚、感覚鈍麻(かんかくどんま=感覚が鈍くなること)、麻痺など、非常に多彩です。そして、再発と寛解(かんかい=症状が落ち着いて安定した状態)を繰り返すため、治療に公費からの補助が受けられる、特定疾患に認定されています。特定疾患としての多発性硬化症には、「視神経脊髄炎(ししんけいせきずいえん)」も含まれているので、ここでは合わせて解説します。

視神経脊髄炎は、元々「多発性硬化症」としてひとまとめに考えられていました。視神経と脊髄に病変が好発するタイプが日本などに多く、大脳に病変が好発するタイプが欧米に多いとされてきましたが、近年、視神経脊髄炎に特異的な抗体(抗アクアポリン4抗体)が発見され、別の疾患として分けて考えられるようになりました。症状はよく似ていますが、患者層や検査結果、症状の強さ、治療法などが異なることが分かってきたためです。

多発性硬化症と視神経脊髄炎の治療法

多発性硬化症と視神経脊髄炎は、急性期には症状をできるだけ速やかによくするための治療を行ない、寛解期(症状がおさまっている時期)には症状を再発させないための治療を行ないます。
急性期においては、どちらの病気もステロイドを点滴する「ステロイドパルス療法」や、血漿(けっしょう)を健常なものに入れ替える「血漿交換療法」などが行なわれます。
寛解期においては治療法が異なります。近年、予防薬の選択肢が広がっており、多発性硬化症ではこれまで用いられていた「フィンゴリモド」などに加え、比較的安全性の高いグラチラマー酢酸塩やフマル酸ジメチル、より効果の高いナタリヅマブ、オファツマブなどが使用できるようになっています。視神経脊髄炎では、「経口ステロイド」や「免疫抑制剤」に加え、一部の免疫系を選択的に調整する生物学的製剤といわれる薬剤も使用されるようになりました。

監修:矢部 勇人
松山病院
脳神経内科 主任部長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。
※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。

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