済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
2022.01.12
エナメル上皮腫は、歯を形成するエナメル器と呼ばれる組織に生じる良性の腫瘍です。歯の組織が腫瘍化するため上下の顎の骨にのみ発症します。
10~20代の若年者に多く、性別では男性にやや多くみられます。発症する部位は下の顎の臼歯部にやや多い傾向があります。進行は緩やかですが、周囲の組織に入り込むように増殖するため、治療後の再発には注意が必要です。ごくまれですが、がんの性質を持った(悪性の)エナメル上皮腫もあります。
通常は痛みを感じることがなく、無症状のまま顎の骨が徐々に膨らみ、「顔面が腫れてきている、変形してきている」、「歯の位置が移動してきている」ことなどで気がつくことがあります。また、歯科治療時に撮影するX線写真で偶然発見されるケースも多々あります。
エナメル上皮腫が疑われた場合、組織を一部採取して調べる病理組織検査によって診断されます。また、X線検査やCT検査によって腫瘍の部位や大きさを診断することは、治療方法の選択に役立ちます。
現在のところ手術で切除するしか治療法がありません。切除方法は、腫瘍を周囲の顎の骨とともに切除する「顎骨切除法」と、顎の骨の形や働きを残すために周囲の骨をなるべく残す「顎骨保存外科療法」の大きく二つに分けられます。顎骨切除法に比較して、顎骨保存外科療法では、再発する可能性が高く、繰り返し手術することがあります。顎骨切除法で顎の骨が切除された場合にはほかの部位から骨を移植し、顎の骨の形や働きを改善する再建手術が必要となることがあります。
どちらの方法を適用するかは、患者さんの年齢、腫瘍の大きさや部位、タイプなどを総合的に考慮し決定します。
痛みなどがないため、症状に気がついたときには病状が進行していることがあります。また、生えてこない歯がある場合はX線の検査を受けることをお勧めします。歯科治療時のX線検査で偶然発見される場合もありますので、歯列矯正などで定期的に歯科治療を受けていることが早期発見につながることもあります。
発症の予防法は残念ながら現在のところありません。病変が小さければ切除する範囲が少なく済み、手術後の機能障害を少なくできる可能性があります。
解説:堀内 俊克
横浜市東部病院
口腔外科部長
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