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2019.11.27

歯牙腫 (しがしゅ)

odontoma

解説:金﨑 朋彦 (千里病院 歯科・口腔外科部長)

歯牙腫はこんな病気

歯胚(歯と歯周組織の基となる細胞)が形成されるときに異常があり、それによって組織が正常に形づくられなかった状態のことで、厳密には腫瘍とはいえません。歯の形から逸脱している「集合型」と、歯の形に類似している「複雑型」の二つに大別されます。

歯の発生過程で腫瘍になるもの(歯原性腫瘍)のうち最も発生率が高く、国内の統計では良性歯原性腫瘍の約4割を占めます。また、集合型が複雑型より多いとされています。

10代に多くみられますが、若年期に発症したものが後年に見つかることもあります。
起こりやすい部位は、集合型では上顎前歯部、次いで下顎前歯・小臼歯部です。複雑型は上下顎とも小臼歯部・大臼歯部(合わせて臼歯部)で、集合型・複雑型が複合したものも少なくはありません。

歯牙腫の好発部位

また、歯牙腫の約半数に埋伏歯(歯の頭のすべてまたは一部が、顎の骨や歯肉の中に埋まって出ていない歯)がみられ、これは1本だけではなく複数本の場合もあります。

歯牙腫の診断

X線撮影では白い像として見えるため、診断は比較的容易に行なえます。X線撮影で偶然発見される場合もありますが、永久歯が生えるのが遅いことから画像検査を行ない発見されることもあります。埋伏歯の歯冠部(歯肉から出ている部分)に見つかることが多いため、歯の根辺りによくみられますが、大きいものは頬骨の内部や頬の粘膜にみられることもあります。集合型は前歯部の埋伏歯など、小型歯牙様硬組織の集合体(小さい歯が集まった状態)としてみられ、複雑型は生えかけの歯の歯冠近くに塊状の石灰化物(一つの硬い塊)として認められます。

歯牙腫の治療

基本的には歯牙腫のみを摘出します。画像検査で位置を確認して取り出しますが、小さいものは容易に摘出できます。さらに、若年者では埋伏歯を残し、矯正装置で歯が生えるのを誘導することも可能です。

歯牙腫に合併することが多い石灰化歯原性のう胞は、再発することもあるため、治療に先立ち生検(病変の一部を切り取り詳しく調べる検査)を行なうべきです。

早期発見のポイント

無症状のままゆっくりと大きくなり、X線撮影で偶然発見されることが多いです。

永久歯が生えてこない場合、過剰歯(通常の本数以上の歯があること)や歯牙腫の存在が十分考えられるため、歯科医院を受診しましょう。特に、左下の犬歯は生えているのに右下はなかなか生えてこないなど左右差がある場合、2カ月くらい様子をみても変化がないようであれば歯科受診することが強く勧められます。

予防の基礎知識

症状はありませんが、将来的に永久歯の歯並びや噛み合わせに問題を生じる原因となります。子どもの歯の生え方に左右差がみられる場合は歯科を受診し、X線撮影により早期に発見することが重要です。

解説:金﨑 朋彦

解説:金﨑 朋彦
千里病院
歯科・口腔外科部長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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