済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
2017.01.13
親指(母指)の付け根に位置する関節は母指MP関節といいますが、レントゲンではそのさらに中枢に母指CM関節を確認できます。この関節は、大菱形骨(だいりょうけいこつ)という手根骨に第1中手骨が乗った構造をしています。大菱形骨は乗馬で用いる鞍のような形をしているため、親指をいろいろな方向へ動かすことが可能となります。
本症では、いわゆる使い過ぎや加齢によって、この関節を支えている靭帯がゆるくなったり、関節表面を覆う軟骨がすり減ることで関節のかみ合わせが悪くなり、親指の痛みや動きの制限が起こります。
テーピングや装具治療を十分行なうことで、ほとんどの場合に症状の改善が得られます。しかし、これらを行なっても改善しない場合は、CM関節内へステロイドの懸濁液を注入することがあります。ただし、これを繰り返すと関節軟骨の損傷が進むため、十分間隔を開けて回数はできるだけ少なくする必要があります。これを行なっても症状が改善しない場合は、手術を行ないます。具体的にはCM関節を構成する片方の骨である大菱形骨を切除し、その後に関節を制動するために橈側手根屈筋腱、または長母指外転筋腱を用いて、CM関節周囲の靭帯を再建する方法(関節形成術)、もしくはCM関節表面を削って関節を固定する手術(関節固定術)を行ないます。
母指CM関節の具体的な位置は、手背(手の甲)を上に向けて親指から手首に向けての輪郭を見た際に、手首のやや末梢でくの字に曲がっているところに相当します。このくの字の頂点の突出が強ければ、関節のかみ合わせが悪くなっていることが示唆されます。ビンのフタを開けようとした際に、親指の付け根から手首の親指側にかけて痛みが生じたり、この関節の背側(上記くの字の頂点)を圧迫して痛みがある場合にこの病態を考えます。ただし、関節の変形が重度でも痛みが出ない場合や、変形が軽度で痛みが出る場合もあります。
親指は他の指に比べ、手を使う上でどうしても使用頻度が高いため、確実に予防を図ることは困難です。実際には、症状が自覚できた際に、それ以上悪化しないような方法を取ることが重要です。具体的には、母指CM関節背側を十字に交差するように緊張をかけて、テーピングをすることが有効です。症状がさらに進むようであれば、母指を安静に保持する装具を作成し、手指を使う際にこれを装着するようにします。
母指を安静に保持する装具(1例)
解説:亀山 真
済生会中央病院
整形外科担当部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。