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2017.01.23
親指を広げる(外転)長母指外転筋腱(ちょうぼしがいてんきんけん)、および親指を伸ばす(背屈)短母指伸筋腱(たんぼししんきんけん)は、手首(手関節)の親指側で共通の腱鞘に包まれています。この腱鞘がばね指と同様に何らかの原因で厚みを増し、中を通過するこれらの腱が締め付けられて痛みを発症します。この2つの腱の間に隔壁がある場合は、症状が重症化する傾向があります。
いわゆる手(特に親指)の使い過ぎで発生し、産前・産後・更年期の女性に多発しやすいという特徴もばね指と似ています。糖尿病患者では、ばね指や手根管症候群※と合併して発生することが多いようです。
症状が出て日が浅い場合は、母指(親指)を開いた状態(外転)でこの位置を保持する装具を2~3週間程度装着します。これを行なっても症状の改善が乏しい場合は、ばね指と同様にステロイドの懸濁液に麻酔薬を混ぜたものを腱鞘内に注入します。ばね指と異なり、この治療で9割以上は症状の寛解が得られます。手術を行なうことはまれですが、その方法はばね指と同様に腱鞘を切開し、腱の引っかかりをとるというものです。時に2本の伸筋腱が隔壁で分けられていることがあり、それぞれの腱鞘を確実に開放しないと症状がとれないこともあります。
※ 手根管症候群:屈筋支帯と手根骨で囲まれたスペース(手根管)で正中神経が圧迫されて発症します。典型的な症状は、母指(親指)、示指(人差し指)、中指、および環指(薬指)の母指側のしびれで、症状が進行すると母指球(親指付け根のふくらみ)がやせて、細かいものをうまくつまめなくなります。
長母指外転筋腱と短母指伸筋腱は、手首の親指の外側で最も張り出している骨の隆起(橈骨茎状突起)の上を通過しており、この部分を圧迫し、痛みを認めるようであればこの病態を疑います。ばね指のようなひっかかりの症状を認めることはほとんどありません。親指を広げて同様の場所に痛みを感じる、あるいは親指を手のひらの中に入れてこれを他の指で包んだ際に痛みが出る場合もこの病態を疑います。
基本的にはばね指と同様に、日常生活での手の酷使を避けることが大事です。特に親指でスマートフォンを長時間操作する方は、疼痛が出てきた際には他の指での操作に切り替えることが必要です。他にはキーボードを打ち続けることや親指を使っての指圧マッサージ、ピアノで親指を伸ばしてオクターブを弾くことなども誘因になっている可能性がありますので注意しましょう。
解説:亀山 真
済生会中央病院
整形外科担当部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。