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2021.02.10
肩関節は、球状の上腕骨頭(じょうわんこっとう=上腕骨の関節部分)に対して、その受け皿となる肩甲骨の関節窩(かんせつか=肩甲骨のくぼみ)の構造が小さいため、可動性が大きいという利点があります。その一方で、不安定性も大きい関節であるという特徴をもっています。不安定な骨形態のため、肩関節の安定性は、関節を覆う関節包や靭帯、周囲の筋肉などの軟部組織による部分が大きいのが特徴です
肩関節脱臼は、それらの軟部組織、特に関節唇(かんせつしん=肩甲骨関節窩の輪郭を覆っている線維性の組織)が損傷することによって、上腕骨頭が主に前下方にずれてしまう状態をいいます。ときに肩甲骨の関節窩骨折や上腕骨の骨折を伴うこともあります。
初回の肩関節脱臼時の年齢が若いと再発するリスクは高くなり、10代では80~90%ともいわれています。一方、中高年で初回脱臼をした場合の再発は少ないといわれています。なお、脱臼を何度も繰り返すことを「反復性肩関節脱臼」と呼びます。
脱臼時には痛みで腕を動かせないことが多く、肩の前下方に上腕骨頭を触れることができます。
反復性肩関節脱臼の場合には、普段から肩関節を外転(外側に開くこと)や外旋(外側に回転させること)すると、痛みや脱臼しそうな不安感があります。
肩関節脱臼の診断では、骨折を伴っているかの判断も含めて、X線撮影を行ないます。反復性脱臼の場合には、関節唇の損傷を評価するためのMRI検査や、肩甲骨関節窩の骨折や摩耗および上腕骨頭の陥没骨折を評価するためのCT検査が行なわれることもあります。
肩関節脱臼をした際に、無理に正常な状態に戻そうとすると骨折を生じることもあります。脱臼した際には速やかに整形外科を受診することをお勧めします。整復後には3~4週間の期間、固定しておくことが多いです。
反復性脱臼の場合には、手術療法が選択されることがあります。主に剥離した関節唇を修復する手術法が多く行なわれていますが、患者さんの肩の状態によっては骨移植など追加の処置が必要となることもあります。近年は、身体をあまり傷つけず負担が少ない関節鏡手術が多くなってきています。
肩関節脱臼は外傷に伴い、強い痛みを生じて腕に力が入らなくなるため、そのような場合にはすぐに整形外科を受診することをお勧めします。また、服を着替えるときなど簡単な動作で再び脱臼したり、強い不安感がある場合には、手術治療を考える必要があります。
肩関節脱臼のほとんどを占める前方脱臼では、肩関節外転・外旋位で脱臼が誘発されるため、外転・外旋しすぎないようにテーピングで固定をしたり、脱臼予防装具を装着することもあります。
解説:松井 智裕
奈良病院
整形外科部長
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