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2022.03.30
陰のうは男性の股間にある袋のことです。その中に、精巣(睾丸)や精巣上体(副睾丸)などの臓器が入っています。陰のう水腫とは、陰のうの内部にある臓器のすき間に液体がたまっている状態です。陰のう水腫には、主として乳幼児にみられる先天性のものと、大人になってから出現する後天性のものがあります。
先天性のものは、腸が入っているおなかの内部と陰のうの中がつながってしまっているために、おなかの中にある液体が陰のうに降りてくることで起こります。2~3歳くらいまでに、おなかの中と陰のう内部の間の通り道が自然にふさがって治ることが多く、たいていの場合はすぐには何もせず経過をみることになります。
また、おなかの中の腸が陰のうの方へ降りてきてしまう病気である鼠径ヘルニア(脱腸)も同じ原因で起きるので、先天性の陰のう水腫と鼠径ヘルニアはしばしば同時に存在します。
後天性のものは原因が不明のことが多いのですが、炎症や腫瘍などが原因で生じることもあるといわれています。
通常は、片側もしくは両側の陰のうが大きくなる以外の症状はみられず、痛みなどもありません。
もし、陰のう水腫と思われていたのに、急に腫れておなかや陰のうの痛みが出現した場合は、緊急の処置を要する別の病気(精巣捻転、鼠径ヘルニアの合併やそれによる腸閉塞など)の可能性があるので至急、専門医を受診してください。
また、先天性のものは、内部の液体がおなかの中と陰のうの中を行ったり来たりするために、日や時間帯によって陰のうの腫れの大きさが変化するのが特徴です。
触診による硬さ(弾力性)の確認や、腫れている陰のうの中身が液体なので、陰のうの向こう側に当てたペンライトの光が透けて見えることなどで診断ができます。また、超音波(エコー)検査も診断に有効です。
先天性の場合は、前述したようにまずは経過をみることになります。3~4歳以降になっても腫れが治らない、あるいは鼠径ヘルニアを合併している場合には、おなかの中と陰のうの中をつないでいる通り道をふさぐ手術が必要になります。
後天性の場合、自然に治ることはありませんが、それほど大きくなくて邪魔でなければ放置してかまいません。大きくて邪魔になったり違和感があったりする場合は、液体がたまらないようにする手術を受ける必要があります。
注射器で中にたまっている液体を抜くという治療方法もありますが、たいていの場合効果は一時的で、そのうちにまた液体がたまって大きくなってきます。先天性のものにはこの治療法は行ないません。
乳幼児では健診やおむつ交換のときに発見されることが多いと思われますが、大人ではそういう機会はほとんどありません。入浴時などに、自分で陰のうの左右差など大きさの変化に気づくことが必要です。
この病気は予防法がなく、大きくなっていくのを止める有効な治療法も今のところありません。
陰のうが腫れる病気には、陰のう水腫のほかに精巣の腫瘍、精巣炎、精巣上体炎、精巣捻転や鼠径ヘルニアなどがあります。陰のう水腫以外はいずれも治療が必要なことが多い病気ですが、何らかの症状があることが多いので、陰のう水腫とは比較的容易に区別できます。
ただ、この中で精巣の腫瘍は、すぐに厳重な治療を要する重大な病気にもかかわらず、陰のうが大きくなっても痛みが出ないことが多いという点が陰のう水腫とよく似ています。陰のうが腫れていても無症状だと、恥ずかしいという気持ちが先に立ってなかなか病院には足が向かないかもしれませんが、安心のために一度は専門医にみてもらうことをお勧めします。
解説:風間 泰蔵
富山病院
副院長 兼 泌尿器科主任部長
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