2020.03.04 公開
精巣上体炎
epididymitis
解説:郷 秀人 (三条病院 三条病院 院長・泌尿器科)
精巣上体とは
精巣上体は精巣(睾丸)の横にある器官です。精巣で作られた精子はここを通過して、精管から最終的に尿道へ運ばれます。
精巣上体炎はこんな病気
精巣上体に細菌が入り込み、炎症を起こす病気です。
高齢者では、前立腺肥大症などの病気により排尿障害をきたすことで細菌による尿路感染が起こりやすくなり、この細菌が原因で炎症を起こします。若い人は、性感染症の病原体であるクラミジアや淋菌が原因で尿道炎を起こし、それが精巣上体まで広がってくることがあります。
精巣上体炎の症状
精巣上体の痛みで始まり、陰のう全体に痛みが広がっていきます。陰のうが赤く腫れ熱を持ち、全身の発熱も起こります。放置すると陰のうに膿がたまり、さらに悪化すると皮膚が破れて膿が出てくることもあります。
精巣上体炎の診断
診察で診断できます。さらに検尿で尿路感染の有無も調べ、性感染症の疑いがある場合にはクラミジア検査や淋菌の検査を行ないます。
精巣上体炎の治療
抗菌薬で治る病気なので、原則は抗菌薬を投与します。軽症であれば内服治療、重症の場合は入院して点滴で抗菌薬を投与します。
きちんと治療をしないと慢性化して膿がたまってしまい、切開や精巣上体の摘出が必要になることもあります。
陰のうを冷やして安静を保つことも重要です。
陰のう内の痛みや腫れに気づいたら、すぐに泌尿器科を受診してください。陰のう内に痛みが出る病気の一つに、早期の手術が必要な精巣捻転(精巣が回転してしまう病気)があります。ですので、痛みが出たら泌尿器科で精巣捻転と区別する必要があります。
高齢男性は、排尿障害があると尿路感染しやすくなるので治療を受けましょう。
性感染症から精巣上体炎になることもあるため、不特定多数との性交渉は避け、性交渉の際にはコンドームを使用することをお勧めします。
解説:郷 秀人
三条病院
院長・泌尿器科
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。
※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。