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2025.02.05
唾液腺炎とは、唾液を生成する唾液腺が細菌やウイルスに感染し炎症を起こすことで、耳の下や顎の下の腫れ、痛み、発熱などの症状が出る病気です。唾液腺は、耳の下にある耳下腺(じかせん)、顎の下にある顎下腺(がっかせん)、舌の下にある舌下腺(ぜっかせん)を総称する大唾液腺(だいだえきせん)と、 口腔粘膜に数百個ほどある小唾液腺(しょうだえきせん)の大きく二つに分けられます。
大唾液腺で作られた唾液は、導管と呼ばれる管を通って口腔内に運ばれ、小唾液腺で作られた唾液は直接口内に分泌されます。
唾液腺炎は、主に大唾液腺に炎症が生じます。耳下腺の発症が最も多く、顎下腺にも好発しますが、舌下腺に発症することは比較的まれです。
唾液腺炎は細菌性、ウイルス性、アレルギー性、自己免疫性の四つに分けられます。当記事では発症数が比較的多い、口腔内細菌の感染が原因の「化膿性唾液腺炎」と、ウイルス感染が原因の「ウイルス性唾液腺炎」について説明します。
・化膿性唾液腺炎
加齢による唾液の分泌量の低下や、唾液に含まれるカルシウムが導管に入り込み、唾液腺や導管の中に石ができてしまう唾石症(だせきしょう)などで唾液の流れが悪くなると、唾液の抗菌作用がうまく働かず、口腔内細菌が唾液腺の開口部から侵入して炎症が起こります。
急性の場合は唾液腺に痛みや腫れが生じ、導管の開口部から膿が出ることがあります。慢性化すると唾液腺が硬くなり、唾液の分泌が少なくなって食べ物が飲み込みにくくなる(嚥下障害)などの症状が起こります。
・ウイルス性唾液腺炎
ウイルス性唾液腺炎の代表的なものとして、流行性耳下腺炎(俗にいう「おたふくかぜ」)があげられます。これは、ムンプスウイルスの感染によって生じるもので、一度感染すると免疫ができ、再感染することはありません。ウイルス感染後の潜伏期間は 2~3 週間です。前駆症状(病気の前兆)として、鼻水やのどの痛みなどの一般的な風邪症状に加え、片側の耳下腺に痛みを伴う腫れが生じ、翌日~数日後に反対側の耳下腺、あるいは顎下腺にも腫れが現れます。
流行性耳下腺炎は小児に多いですが、大人が発症すると精巣の横にある精巣上体(副睾丸)に炎症が起きる副睾丸炎(精巣上体炎)や卵巣に炎症が生じる卵巣炎などを併発し、不妊の原因になることもあります。
・化膿性唾液腺炎
唾液腺周囲やリンパ節の腫れ、唾液の出口から膿が出ていないかを確認します。さらに、X 線検査や CT 検査で、唾石の有無を診ます。血液検査で炎症の程度を調べる場合もあります。
・ウイルス性唾液腺炎
確定診断を得るためには、血液検査でウイルス抗体価という特定のウイルスに作用する抗体数を測定する必要があります。ただ、耳下腺部、顎下腺部の腫れや痛み、それに伴う発熱などといった特徴的な症状と流行状態から問診で容易に診断されることが多いです。
・化膿性唾液腺炎
抗菌薬、鎮痛剤の投与を行ないます。唾石が原因で唾液の流れが悪くなり、唾液腺炎を繰り返している場合は、唾石の摘出手術が必要になります。
・ウイルス性唾液腺炎
解熱剤、鎮痛剤投与による対症療法を行ないます。
顎の下、耳の下、舌の下に痛みや腫れがある場合は唾液腺炎の可能性があります。また、唾石がある人は顎の下の腫れや、食事の際の痛みといった特徴的な症状が現れるので、気になることがあれば早めに受診することが重要です。
唾液の流れをよくするために日頃からよく噛んで食べること、歯磨きをきちんとして口の中を清潔に保つことが重要です。奥歯と耳の間にある耳下腺や、顎の骨の内側にある顎下腺、下あごの中央、窪みの部分にある舌下腺を外から指で押して刺激を加え、唾液を出やすくする唾液腺マッサージも有効です。
解説:田中宏史
西条病院
歯科口腔外科 部長
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