社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2023.12.27

唾石症 (だせきしょう)

ptyalolithiasis

解説:金子 富美恵 (済生会有田病院 耳鼻咽喉科 医長)

唾石症はこんな病気

唾石症は、唾液腺や導管の中に石のような塊ができる病気です。
唾液は唾液腺で作られ、導管を通じて口内へ流出します。唾液の役割は口の潤いや清潔を保ち、食べ物の消化を促すほか、唾液にカルシウムが濃く含まれるため歯の保護にも役立ちます。このカルシウムが導管に入り込んだ細菌や異物を芯にして、塊となったものが「唾石」です。

唾液腺は、首の周りに位置する「大唾液腺」と、口の粘膜に埋まっている「小唾液腺」に分けられます。大唾液腺は「耳下腺(じかせん)」「顎下腺(がっかせん)」「舌下腺(ぜっかせん)」の3種類あり、中でも顎の下に位置する顎下腺に、唾石ができやすいことが知られています。顎下腺の導管(ワルトン管)は舌の裏へ通じており、ねっとりした唾液が出ます。耳の前から頬に位置する耳下腺にも、まれに唾石ができることがあります。耳下腺の導管(ステノン管)は頬の裏へ通じており、サラサラの唾液が出ます。舌下腺や小唾液腺に生じることは極めてまれです。

唾石症の症状

食事をきっかけに顎の周りが腫れて痛む「唾疝痛(だせんつう)」が、特徴的な症状です。これは食事への反応で増えた唾液が、唾石でせき止められるために起こります。導管に口から細菌が入り込んで感染すると、痛みの悪化、皮膚の赤み、高熱などの症状が現れます。

唾石症の検査・診断

最も多い「顎下腺唾石」について説明します。首の外と口の中を両手で探る双手診(そうしゅしん)で硬い塊に触れます。その後、X線検査やCT検査を行ない、カルシウムを示す白い塊が写れば確定診断となります。超音波検査で確認されることもあります。

唾石症の治療法

導管の出口付近にある小さな唾石であれば唾液に押し出され、自然に排出されることがあります。細菌感染で炎症を起こしている場合は、抗菌薬を投与します。感染を繰り返す場合は、唾石の摘出手術を行ないます。口から触れる唾石(画像A・B)は導管を切り開いて摘出しますが、唾石の再発や舌の麻痺が起こる可能性があります。

画像A

画像B

顎下腺に深く食い込んでいる唾石(画像C)は、顎の下の皮膚を数cm切開し、顎下腺ごと摘出します。根治治療となりますが、切開の傷がつくことと、下唇が麻痺する恐れがあります。

画像C

近年では導管に極細の内視鏡を挿入し、極小の器具で唾石を摘出する「シアロエンドスコープ(唾液管内視鏡)手術」が行なわれています。これは首に傷がつかないというメリットがありますが、手術を行なえる唾石の位置やサイズが限られています。

「食事をきっかけに顎に腫れや痛みが出る」という症状は、唾石を疑う最も重要な情報です。また、自分で口の中から触って唾石があることに気づく場合もあります。その際は、舌の裏に「米粒」のようなものが触れたり、舌の付け根に「硬い石」のようなものが触れたりします。

口の乾き(ドライマウス)を感じる人もいます。これは唾液が唾石でせき止められ、導管から口へ唾液が流れなくなることが原因とされています。唾液の量が減ることで導管の流れが悪くなり、唾液中のカルシウムが沈着を起こしやすくなるため、ドライマウスは「唾石ができやすくなる原因」にもなります。

唾石を予防するためには、導管の中を唾液が適切に流れやすい状態にしておくことが重要です。唾石ができてしまっても、唾液の流れがせき止められなければ症状が出ることはありません。できかけの唾石があっても唾液で口の中まで流し出すことができれば、唾石の予防につながります。普段からよく噛んで食べ、唾液の流れを整えることが大切です。
また、唾液腺マッサージも有効です。

水を十分に飲んで、口の乾燥を防ぐことも重要です。唾液中の水分が減るとカルシウムが唾液に溶け切らなくなり、固まりやすくなります。ただし、カルシウムを多く含むミネラルウォーターは、飲み過ぎで唾石ができやすくなるという報告もあるので、飲み水の種類を選ぶときには注意が必要です。

唾石の芯になる異物は「細菌」や「食べ物のかす」といわれています。歯みがきやうがい、入れ歯の洗浄など、口腔ケアを怠らないようにしましょう。

解説:金子 富美恵
済生会有田病院
耳鼻咽喉科 医長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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