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2022.06.08
ループス腎炎は、自己免疫性疾患の一つである全身性エリテマトーデス(SLE)に合併して生じる腎臓病です。
腎臓の中の「糸球体(しきゅうたい)」と呼ばれる尿のろ過装置に、SLEに起因する免疫複合体の沈着、細胞の増殖、微小血栓や壊死などが発生することによって腎機能の低下が引き起こされます。
SLEは若い女性に多くみられ、代表的症状としては38℃を超える発熱や関節痛、蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)と呼ばれる鼻から両頬にかけて現れる皮膚の赤みなどが特徴的です。血液検査で「汎血球系(赤血球、白血球、血小板)の減少」「各種自己抗体(抗二本鎖DNA抗体など)の検出」「血清補体価(免疫の状態を判断する数値の一種)の低下」などがみられます。
SLEの40~80%程度にループス腎炎の合併がみられ、その生命予後(発症後に生命が維持できるかどうかの経過)に大きく影響します。
発熱、関節痛、蝶形紅斑など最もよくみられる症状はSLEによるものですが、ループス腎炎ではタンパク尿に加えて、顕微鏡的血尿(自覚症状のない血尿)、浮腫、高血圧症の合併がみられます。また、ネフローゼ症候群や急激な腎機能低下は予後不良のサインといわれています。
臨床所見および血清学的検査においてSLEと診断され、1日0.5g以上のタンパク尿、あるいは尿沈渣(にょうちんさ=尿の内容物の顕微鏡検査)で赤血球円柱などがみられた場合にループス腎炎が疑われます。
正確には腎生検(局所麻酔後、超音波で確認しながら背部から細い針を刺して腎臓の組織を採取する検査)によって、腎炎の組織分類と活動性(病気の勢い)の確定診断を行ないます。
タンパク尿の減少と腎機能の維持・改善が治療の目標となります。
腎生検による組織分類と活動性に応じて、ステロイド薬単独での治療と、さまざまな免疫抑制薬(カルシニューリン阻害薬、代謝拮抗薬およびモノクローナル抗体製薬)による治療を、複合的に行ないます。
また、腎保護作用とタンパク尿減少を目的として、ACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬なども併用します。
しかし、治療の効果がなく、進行性の腎不全をきたした場合には、透析療法や腎移植などの腎代替療法が必要になる場合もあります。
SLEは全身の臓器に多くの症状が現れ、患者さんによってその出現パターンや重症度は異なります。「医学解説」の「ループス腎炎の症状」で示したような特徴的な症状が現れない場合には、早期の診断が難しいこともあります。
残念ながら、ループス腎炎の予防法はありません。
SLEは遺伝的素因+環境要因(紫外線や感染、喫煙など)の複合によって発症すると考えられていますが、遺伝病ではありません。SLEの患者さんでタンパク尿などの尿に関する検査結果が出ている場合は、腎生検によって確定診断を行なっておくことがループス腎炎の早期治療や予後不良の予防につながります。
解説:安永 親生
八幡総合病院
腎臓(移植)外科主任部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。