2018.11.14 公開
巨赤芽球性貧血
Megaloblastic Anemia
解説:窪田 剛 (大阪府済生会富田林病院 副院長)
巨赤芽球性貧血はこんな病気
ビタミンB12もしくは葉酸(ビタミンの一種)が不足することで生じる貧血です。これらのビタミンは赤血球の細胞骨格を維持するのに必要な物質で、欠乏すると体内で新たに血液を造ることができなくなります。お饅頭作りに例えると、皮が足りないというイメージです(あんこが足りないのは鉄欠乏性貧血)。ビタミンB12欠乏による貧血は、人口10万人あたり年間1~2人程度発症するといわれています(鉄欠乏性貧血は日本の成人女性の約25%が発症するといわれる)。葉酸欠乏が原因となるケースはさらに少ないと考えられていますが、大酒家に多いとされます。
巨赤芽球性貧血の大多数はビタミンB12欠乏によるもので、その代表的なものは「悪性貧血」です。これはビタミンB12を吸収するのに必要な内因子という物質や、それを産生する胃の壁細胞に対して自己免疫機能が働き、ビタミンB12が吸収できなくなるというものです。その他の原因として、胃の全摘出や小腸疾患、極度の摂食低下(菜食主義など)があります。しかし、ビタミンB12は体内に貯蔵できるため、原因疾患が生じたとしても数年かからないと貧血には至りません。
葉酸欠乏の原因は、偏食やアルコール依存症などによる摂取不足、消化器疾患による吸収不良、薬剤投与によるものなどがあります。
検査して血液中のビタミンB12や葉酸の値が低かったりすると巨赤芽球性貧血と診断されますが、白血球や血小板といった他の血液細胞の産生にも影響するので、すべての血球数が減少する「汎血球減少症」を引き起こします。悪性貧血では内視鏡検査で萎縮性胃炎(胃の粘膜が萎縮し薄くなった状態)が確認され、胃がんの発症元になることもあります。
巨赤芽球性貧血の症状
動悸や息切れ、疲労感といった貧血の症状が現れます。その他に、萎縮性胃炎やハンター舌炎(味覚障害や舌の痛みを伴う炎症)など消化器系に異常をきたします。また、ビタミンB12欠乏症において、手足のしびれ、思考力の低下、性格変化などの神経症状もみられます。
巨赤芽球性貧血の治療法
ビタミンB12欠乏が原因の場合、まずビタミンB12の注射(静脈注射または筋肉注射)で開始しますが、貧血改善後も間隔をあけて生涯継続が必要になります。葉酸欠乏の場合は葉酸製剤の内服で対応できることがほとんどです。
解説:窪田 剛
大阪府済生会富田林病院
副院長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。
※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。