2014.11.19 公開
2025.10.30 更新
野球肘
Baseball elbow
監修:織田 崇 (小樽病院 整形外科 診療部長)
野球肘はこんな病気
ボールを投げすぎることによって発生する肘の障害をまとめて「野球肘」といいます。ボールを投げる時や投げた後に肘が痛くなります。野球肘には①内側の障害、②外側の障害、③後ろ側の障害があります。肘を伸ばして手のひらを上に向けたときの小指側が内側、親指側が外側、手の甲側が後ろ側です(図)。いずれも、繰り返しボールを投げることによって肘に負担がかかり過ぎることが原因です。小中学生のときの障害が原因となり、高校生以後に肘を傷めることも少なくありません。

「内側の障害」は子供から大人まで幅広い年代で起こりますが、小中学生で特に多くみられます。引っ張る力がかかることで、靭帯や腱、またはその付け根の骨や軟骨が損傷します。痛くなったきっかけがはっきりしている場合は、骨や軟骨の一部が剥がれた可能性があります。少しずつ繰り返す痛みであれば、靭帯が損傷している可能性があります。多くは投球の禁止や制限でよくなりますが、剥離骨折や靭帯の断裂が起こると、ギプスや装具による固定が必要となることがあります。
「外側の障害」は小中学生に多くみられます。骨と骨とがぶつかる圧迫力がかかることで軟骨や骨が損傷する「離断性骨軟骨炎」が生じます。初期では投球の制限や禁止とリハビリで改善します。病状が進むと手術が必要となることがあります。治療方法としては、軟骨の再生を促したり、身体の別の部位から骨と軟骨を移植したりすることで改善を目指します。関節の変形が進むと、伸びや曲がりが悪くなり投球に支障が生じ、日常生活にも影響する場合があります。
「後ろ側の障害」はほとんどが中学生以後に起こります。肘を伸ばす力により腱の付け根の損傷や骨の成長軟骨の障害、疲労骨折が生じます。骨同士がぶつかることで損傷することもあります。投球の制限や禁止で改善しますが、骨折すると手術が必要となることがあります。
早期発見のポイント
ボールを投げるときや投げた後に肘が痛くなったら、早めに病院を受診しましょう。内側の剥離骨折はきっかけとなった投球がはっきりしていることが多いです。使い過ぎによる損傷の場合は、痛みを我慢してプレーを続けると病状が進んでしまいます。特に外側が痛くなった場合は、レントゲンだけでなく、超音波やMRIなどにより、骨や軟骨にダメージがないかをよく確認することが大切です。
地域によっては、少年野球を中心に、野球肘検診を行なっています。問診や診察、超音波検査で肘の障害を早期に見つけることができ、障害の予防や進行の防止に役立っています。
肘を触ったり押した際の違和感や痛み、腫れなどを左右で比較することで、痛めている箇所や進行具合を調べることができます。
① 肘の曲げ伸ばし
肘を伸ばしたり曲げたりした際に、伸びや曲がりが悪い、伸ばすと痛い、腫れている、熱っぽいなどの症状が無いか

②押した際の痛み
・内側上顆

肘の内側で骨の出っ張りを軽く押します。痛みがあると靭帯や腱、付け根の骨や軟骨が損傷しているかもしれません。
・肘頭

肘の後ろ側中央にある骨の出っ張り(肘頭)を軽く押します。痛みがあると成長軟骨の障害や疲労骨折があるかもしれません。
・上腕骨小頭

肘を十分に曲げて、肘頭の外側(親指側)で筋肉の奥に骨を触れます。痛みがあると離断性骨軟骨炎かもしれません。
予防の基礎知識
まず、投げすぎないことが大切です。練習や試合で、1日や1週間に投げてよい数を決めておきましょう。日本臨床スポーツ医学会の「青少年の野球障害に対する提言」(1995年)において、試合を含めた投球数の目安が示されています。小学生では、1日50球以内、週200球以内。中学生では、1日70球以内、週350球以内。高校生では、1日100球以内、週500球以内が望ましく、1日2試合の登板は禁止すべき、とされています。また各種連盟や協議会などからも、年代やリーグに応じたガイドラインが示されています。
次に、肘に負担のかからない投げ方をマスターすることです。肩の関節や股関節の動きが悪いと肘が下がり負担がかかりやすくなります。日頃から肩や股関節周囲のストレッチ(※)を十分に行ない、可動域を広げるようにしましょう。
実際のストレッチの方法については、下記をご参照ください。
※参考:日本スポーツ整形外科学会のスポーツ損傷シリーズ「32.野球肘予防のためのストレッチ」

監修:織田 崇
小樽病院
整形外科 診療部長
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