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2023.10.04
膝離断性骨軟骨炎は、血流が悪くなることによって軟骨の下にある骨「軟骨下骨(なんこつかこつ)」が壊死し、膝関節の軟骨の一部が骨ごと剥がれてしまう病気です。成長期のスポーツ選手に多くみられ、ストレスや外傷によって軟骨下骨に負担がかかることが原因で起こると考えられています。好発年齢(膝離断性骨軟骨炎になりやすい年齢)は10代前半で、男女比はおよそ2:1です。
発生部位別の頻度は、膝関節の大腿骨内側が85%、大腿骨外側が15%で、まれに膝蓋骨(しつがいこつ=いわゆる「膝の皿」)にも起こります。大腿骨の外側に起こった場合は「円板状半月(半月板が通常より分厚く引っかかりやすい状態)」を合併することがあります。
発育期に早期発見された場合、安静にしたり免荷(めんか=松葉杖などで膝に体重がかからないようにすること)したりすることで、自然治癒することもあります。
骨軟骨片(こつなんこつへん=軟骨と骨のかけら)がまだ剥がれていない初期段階では、主に運動後の不快感や鈍痛が現れます。関節軟骨表面に亀裂が発生すると痛みが増し、運動やスポーツに支障が生じます。さらに骨軟骨片が剥がれると、膝を曲げ伸ばしした際に引っかかるような違和感があったり、膝の中で異音がしたりします。
通常のX線では初期の病変は写らないことが多いため、MRI検査で確定診断します。
骨軟骨片が剥がれ落ちて関節内を遊離(移動)する状態になると、X線検査で骨が薄くなったり骨軟骨片が剥がれていたりする様子が確認できるため、簡単に診断ができます。
まだ身長が伸びている発育期の患者さんで骨軟骨片が剝がれていない初期の段階であれば、膝関節を安静にしたり、免荷などの保存的治療を行ないます。その後、X線やMRI検査によって回復していることが確認できれば、制限していた活動を少しずつ再開していきます。
上記のような保存療法で効果がみられない場合や骨軟骨片が剥がれ落ちてしまった場合は、手術が選択されます。
まだ骨軟骨片が剥がれていない初期は、患部に数カ所の穴を開け、その中に関節鏡(関節の内視鏡)を入れて観察しながら出血させ、治癒機転(患部を修復する身体の仕組み)を促進させます。
一方、骨軟骨片が剥がれてしまった場合は、骨軟骨片を骨釘(こってい=自分の骨で作った釘)や体内で分解・吸収されるピンなどで固定する「整復固定術」を行ないます。
剥がれ落ちて遊離する骨軟骨片が小さい場合は、摘出するだけの場合もあります。また、骨軟骨片の状態が悪く、骨癒合(こつゆごう=骨と骨がくっつくこと)が期待できないときは、大腿骨の体重がかからない部位から採取した自家骨軟骨柱(じかこつなんこつちゅう)を病変部に移植するモザイクプラスティ術(自家骨軟骨柱移植術)が選択されます。
膝離断性骨軟骨炎は、進行すると骨から軟骨が完全に剥がれて関節内遊離体(剥がれて関節内を移動する軟骨のかけら)が生じてしまうため、早期発見が大切です。
関節内遊離体が生じていない時期の症状は曖昧ですが、発育期のアスリートが膝に漠然とした痛みや不快感を訴えるときは、膝離断性骨軟骨炎である可能性があります。病院を受診し、X線検査だけではなく、早期発見に有効なMRI検査も受けることをお勧めします。
発育期は特に、適切な運動強度と運動量の指導が重要です。過度な膝関節への負荷を避けることが予防につながります。
解説:真柴 賛
香川県済生会病院
副院長 整形外科
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