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2025.04.02
慢性リンパ性白血病とは、体内に侵入した病原体から身体を守り、免疫を維持する白血球の一種・リンパ球のうち、Bリンパ球の一部ががん化して異常リンパ球となり、無制限に増殖する病気です。血液や骨髄の中で増殖していくものを慢性リンパ性白血病、リンパ節内で増殖していくものを小リンパ球性リンパ腫と呼びますが、医学的には同じ病気です。60歳以上で発症する方が多く、高齢になるほど発症率が高くなります。
慢性リンパ性白血病を発症された方のほとんどは、特に何の自覚症状もありません。小リンパ球性リンパ腫も、リンパ節が腫れる以外は特に痛みなどの症状もありません。基本的には年単位でゆっくり進行していく病気ですが、まれに急激に進行する場合もあります。
発症の原因ははっきりとわかっていません。年間発症率でいうと、日本人の年間発症率は10万人当たり0.3人で、全白血病の約3%であるのに対し、欧米では10万人当たり4.5人と、全白血病の約25%を占めています。この差から、何らかの遺伝的な要因が関連していると考えられています。
慢性リンパ性白血病、小リンパ球性リンパ腫ともに、初期の自覚症状は基本的にありません。症状のない比較的安定した時期から異常リンパ球数を減らす、もしくは腫れているリンパ節を小さくするための治療を始めてもメリットはあまりなく、むしろ抗がん剤投与による副作用や金銭負担、たびたび通院する負担などといったデメリットが大きくなってしまいます。そのため自覚症状のない初期段階では、定期的に通院して経過観察のみを行なうことが一般的です。
治療開始の基準は、自覚症状の出現や検査値の異常です。自覚症状には、以下のようなものがあります。
治療が必要な状態になったら、医師と本人で相談の上、治療を開始します。
異常リンパ球が血液や骨髄の中で増殖していく慢性リンパ性白血病は、健康診断や他の病気の定期検査の際、白血球数(リンパ球)が正常値(成人で1000~4800/μL)より多いことから発見につながることが多いです。血液中のリンパ球数が5,000/μLを超えている場合、リンパ節から細胞を採取し細胞の表面や細胞内部を検査するリンパ球の細胞表面マーカー検査を行ないます。
異常リンパ球と正常なリンパ球を見た目だけで区別するのは難しいため、細胞表面マーカー検査を経て、細胞表面のタンパク質の違いで見分けます。検査によって異常が見つかったら、診断を確定させるために骨盤の骨から骨髄検査を行ない、予後を予測するための染色体検査を実施します。
異常リンパ球がリンパ節内で増殖していく小リンパ球性リンパ腫は、腫れているリンパ節から病変の組織を採って、特殊な抗体で染めて顕微鏡で調べることで確定診断されます。リンパ節病変の広がりに関しては、がん細胞の活動をみる検査(PET検査)と、臓器の形状の異常をみる検査(CT検査)を同時に行なうPET-CT検査などの画像検査や骨髄検査で判定します。
慢性リンパ性白血病・小リンパ球性リンパ腫ともに、初回の治療は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)という酵素の働きを抑える薬(ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬)を使用するのが一般的です。内服薬である「イブルチニブ」「アカラブルチニブ」「ザヌブルチニブ」のいずれかを服用し、外来通院で治療を行ないます。ただし「アカラブルチニブ」と、悪性腫瘍細胞の増殖や生存を阻害する抗悪性腫瘍剤の「オビヌツズマブ」を併用する場合は、短期間の入院が必要です。
これらの薬で効果が得られない場合や、一度軽快しても再燃がみられた場合は、別のBTK阻害薬を用いたり、BTK阻害薬以外の薬での治療(ベネトクラクスとリツキシマブの併用療法や、ベンダムスチンとリツキシマブの併用療法)などを行ないます。
慢性リンパ性白血病と小リンパ球性リンパ腫に使われる抗がん剤は、比較的新しいタイプの薬で有効性が高く、副作用が少ないのが利点です。しかし薬剤費が高いことから、健康保険適用であっても自己負担額が高額となる場合があります。負担が大きい際には、自己負担額が高額の場合に一定の金額が後で払い戻される国の高額療養費制度が利用できるかもしれません。制度の詳細については、かかっている医療施設の窓口にお問い合わせください。
解説:藤田浩之
横浜市南部病院
副院長 血液内科 主任部長
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