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2015.03.18
◇小児てんかん
てんかんは、大脳ニューロンという神経細胞が、「電位」と呼ばれる信号を、いきなり過剰に発射することによって、発作が繰り返し起きる、慢性の疾患です。全小児の中でこの病気にかかっている方の割合は0.5~0.8%で、国内における患者数は100万人以上とされています。
小児てんかんの特徴は、表1のように年齢によって発生しやすい種類が異なる点です。乳児期に発症するてんかんは、大田原症候群やウエスト症候群など難治性のてんかん性脳症群と、抗てんかん薬が効きやすく、2歳前後には治癒する良性乳児てんかんに大きく分かれます。幼児期以降は、頻度的には小児欠神てんかん、ローランド発作、若年性ミオクローヌスてんかんといわれるものなどが多くあります。
治療法は、症状や検査などから確実な診断を行ない、その診断に基づいた最適の抗てんかん薬を投与することです。最近、難治例でけいれんの原因となる病巣が検査の画像上明らかになる症例では、てんかん脳神経外科による手術例も増加している傾向にあります。
◇熱性けいれん
脳には興奮性ニューロンと抑制系ニューロンというものがあり、脳はそのバランスを上手に保ちながら活動しています。小児では、発熱や嘔吐・下痢などに伴って、このバランスが崩れてけいれんが起こりやすくなります。熱性けいれんは、38℃以上の発熱に伴うけいれんで、継続時間は5分以内が多いのが特徴です。起こりやすい年齢は、6カ月~6歳で、子どもの8~9%と高い頻度でみられます。同日にけいれんを繰り返す例や、けいれんが15分以上継続する例では、髄膜炎、脳炎などの可能性も疑われます。熱性けいれんを繰り返す例では、けいれん予防のため、発熱し始めにベンゾジアゾピン系坐薬を使用するのが一般的です。
◇小児てんかん
けいれんの型として強直性(動きが固まってしまう)、間代性(ガタガタと手足が震える)、ミオクローヌス発作(ピクピクと引きつるような動き)は、見た目上で明確に判別できます。その後の症状として、頭痛、嘔吐、尿失禁などを伴うことが多いです。
小児てんかんは表2のように2つの軸に分類されます。症候性全般てんかんの大田原症候群、ウエスト症候群などは周産期(出産前後の期間:妊娠22週から出生後7日未満)に異常を合併した例に多いため、既往歴をしっかりと告げることが、診断のために重要です。特発性全般てんかんの欠神発作(失神を伴う発作)は、10~20秒程度にわたって意識を失うのが症状の主体で、幼稚園、学校などで気づかれる症例も多くあります。過呼吸による誘発や、特徴的な脳波の出現などから診断されます。小児においてはチック、驚愕反応、夜驚症、夢中遊行症、ヒステリーなどの可能性もあるため、診断は慎重に行われます。これらのことから、けいれんを疑った場合には、脳波検査、頭部MRIなどの検査を受けるのが大切です。これらの検査は、身体への負担も少なくすみます。
◇熱性けいれん
けいれんは強直発作(きょうちょくほっさ:四肢、頚部、体幹などの筋のつっぱりあるいはこわばりが起こり、このため身体がねじれると同時に意識消失がみられる)で始まり間代性発作(かんたいせいほっさ:手足が突然に屈曲伸展してガタガタとふるわせるけいれん発作)へ移行していきます。眼球偏位(がんきゅうへんい:左右の眼球がそろって上がったり、下がったり、側方へ寄ったままの状態)、チアノーゼを伴い、5分程度でおさまります。
熱性けいれんは家族性があることが多く、家族の病歴を伝えることも重要です。私も、最近、ある種の遺伝子異常を伴う家族例を経験しました。このような家系では、次の代まで熱性けいれんの素因が引き継がれます。また、熱性けいれんの子どもは7歳までに4%、25歳までに7%がてんかんに移行していくため、熱性けいれんの起きやすい年齢を過ぎても、経過観察は必要です。
◇小児てんかん
現在、てんかんの発症を予防することはできません。てんかんに関しては、けいれんの発症をいかに予防するかが重要です。表3のように発作のタイプを診断し、それに対する薬を続けて服用することが、けいれんのコントロールのためには必要です。しかし、副作用などの問題で薬を継続できない症例も多くあります。このようなケースでは、別の薬に移行しますが、最近では新薬も増え、薬剤の選択に幅が出てきています。けいれん予防のためには、生活習慣に気を付けることも重要です。以前、テレビのアニメ番組での特異な光刺激で、てんかんとは関連しない多くの子どもがけいれんを起こしたこともあり、患者さんに対して、テレビゲームなどはある程度の制限が行なわれています。また、過度の疲労の蓄積などは、けいれんを誘発しやすいほか、欠神てんかん患者は過呼吸によって発作が誘発されやすいため、吹奏楽などは勧められません。
◇熱性けいれん
発熱は、感染によって起こるため、日常の感染予防のための手洗い・うがいなどは予防手段の一つとして有効です。また、インフルエンザウイルスは中枢神経系との親和性が強く熱性けいれんを起こしやすいので、流行時期には、予防接種を含めて対応することが必要です。また、入浴による体温上昇でけいれんを誘発することもありますから、熱性けいれんの患者さんには、高温湯での長時間入浴は避けるように指導しています。医療面では、2~3回以上の熱性けいれん既往の患者には、ベンゾジアゾピン系座薬で対応します。38℃以上の発熱初期に1回投与し、発熱が続くようなら、8時間後に2回目を投与することで、熱性けいれんの90%は予防できます。
解説:田中 主美
川内病院
統括診療部長・小児科部長
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