済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
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2022.05.25
黄斑上膜は、黄斑という網膜の中心にあたる部分の表面に薄い膜ができる病気です。黄斑前膜、網膜前膜、網膜上膜と呼ばれることもあります。特に原因なく膜ができる場合を特発性黄斑上膜といい、主に高齢者に発症します。他の眼の病気の影響で膜ができる場合は続発性黄斑上膜といい、小児や若年者でも発症することがあります。
初期の上膜は非常に薄く、なんの問題も起きないのですが、時間の経過とともに厚くなっていくと上膜自体が収縮し始めます。上膜が収縮すると張り付いている網膜に皺(しわ)ができ、物がゆがんで見えるといった症状が現れます。カメラのフィルムや映画のスクリーンがゆがめば写る映像もゆがんでしまうのと同じ現象です。
また、変形した網膜は機能が低下しますので、視力低下や見づらさの症状も現れます。
最も多くみられる症状は、視力の低下、物がゆがんで見える、左右のそれぞれの目で物の大きさが違って見えるというものです。それ以外に、視野の中心がぼやける、色の見え方がおかしいといった症状もみられます。
ただし、他の黄斑部の病気でも全く同じ症状が現れますので、診断には眼科での検査が必要となります。上膜の発達とともに症状も進行していきます。
症状が進んだ黄斑上膜は眼底検査で比較的容易に診断が可能ですが、初期は膜の有無が分かりにくい場合があります。最近は光干渉断層計(OCT)という眼底検査装置が普及しています。OCTは眼底の断層写真を撮影できる装置で、検査は短時間で済み、早期の黄斑上膜でも発見・診断が可能です。
黄斑上膜の眼底断層像(OCTで撮影)
正常眼底の眼底断層像(OCTで撮影)。
中心のなだらかにへこんでいる部分が黄斑
薬で治療することはできず、手術が必要です。手術は黄斑上膜を網膜表面から剥がすだけですが、このためには眼球内の硝子体(しょうしたい)の切除も同時に行なう必要があります。自然に上膜が剥がれてしまうことがまれにありますが、これに期待して長期放置すると視力低下が進行し、回復不能になってしまいます。
黄斑上膜の影響で、ゆがみの症状や視力低下が進行してきたら、早めに手術を受ける方がよいでしょう。
普段両目で物を見ていると、片目の見え方の異常になかなか気づくことができません。健診などで定期的に左右それぞれの目の視力を確認してください。また、時々片目を閉じてみて、見え方に異常や左右差がないか確認してみるのも有効です。
残念ながら、現在のところ黄斑上膜を予防する方法はありません。
見え方に異常があったり、健診で指摘されたりした場合は、速やかに眼科を受診してください。
解説:長谷部 日
新潟病院
眼科部長
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