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2015.12.01
尋常性乾癬とは、皮膚に紅斑(血管拡張や充血が真皮内に起こり赤くなった状態)ができ、次第にその表面が銀白色の細かいかさぶたで覆われ、やがてそれがフケのようにボロボロとはがれる皮膚の病気です。
炎症性角化症の代表的な病気が乾癬(かんせん)であり、その症状によって5つのタイプ(尋常性乾癬、関節性乾癬、膿疱性乾癬、滴状乾癬、乾癬性紅皮症)に分けることができます。最も多いタイプがここで述べる尋常性乾癬です。日本の乾癬患者数は10万~20万人と推計されており、欧米の10分の1程度です。男性のほうが女性より多いといわれ、好発年齢は男性が30代~40代、女性が20代です。
乾癬の原因は解明されていませんが、細菌やウイルスによって起きる病気ではないので、ほかの人に感染する心配はありません。
皮膚にできた紅斑や発疹が乾燥し、角質がはがれ落ちます。正常な皮膚との境界がはっきりしているという特徴もあります。また、健康な皮膚でも掻いたりすると刺激によって尋常性乾癬と同じような症状が現れます。
本来、健康な皮膚は表皮細胞が生まれてからはがれるまでの工程を28日周期で繰り返しています。これに対して、尋常性乾癬の皮膚では表皮細胞の異常な増殖が起き、健康な皮膚に比べて10倍以上の速度で表皮が作られます。そして、過剰に作られた表皮は積み重なって、やがてはがれ落ちていきます。また、炎症性の細胞が集まってきて活性化するため、毛細血管が拡張して赤みを帯びたようになります。
基本は、ステロイド剤やビタミンD誘導体の外用薬で治療します。難治な場合は、紫外線療法または、ビタミンA誘導体や免疫抑制剤による内服療法、最先端のバイオ技術によって生み出された生物学的製剤による治療法も注目されています。
紅斑(血管拡張や充血が真皮内に起こり赤くなった状態)や発疹が乾燥し、角質がはがれるなどの症状があれば、尋常性乾癬を疑いましょう。好発部位は、刺激を受けやすい頭部、肘、膝、腰、尻、股、陰部などです。また、尋常性乾癬の患者さんには肥満の傾向も多くみられます。
初期段階や軽症の場合は、脂漏性湿疹やアトピー性皮膚炎と区別がつきにくいこともありますので、ほかの病気と識別するためにも早期の受診をおすすめします。
「医学解説」でも述べたように、尋常性乾癬の原因はまだ解明されていません。ただ、免疫の異常が起こりやすい体質に加えて、ストレスや食事、飲酒、喫煙、風邪をはじめとする外的な因子と、糖尿病、脂質異常症、肥満などの内的な因子がかかわって発症すると考えられています。
原因が解明されていないため、予防が難しい病気ですが、発症した場合は症状の悪化を防ぐためにも、以下のようなことに注意して日常生活を送るよう心がけましょう。
・毎日入浴して皮膚を清潔に保つ
・高タンパク質、高脂肪の食事のとり過ぎに注意する
・香辛料などの刺激物はかゆみを増長するためできるだけ控える
・飲酒は体温を上昇させ、かゆみを引き起こしやすくするので控えめにする。特に深酒は、無意識に患部を掻きむしって症状を悪化させることもあるので注意
・睡眠不足、疲労、ストレス、不安はできるだけ早めに解消する
解説:畑 康樹
横浜市東部病院
皮膚科部長
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