社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2020.03.11

疥癬 (かいせん)

scabies

解説:坂口 郁代 (川内病院 皮膚科部長)

疥癬はこんな病気

ヒゼンダニ(疥癬虫)による感染症で、人の皮膚の角質層(一番外側の層)にヒゼンダニが寄生することにより発症します。ヒゼンダニの虫体、ふん、脱皮殻などに対するアレルギー反応による皮膚の症状とかゆみが生じます。

疥癬の症状

症状から、一般的にみられる通常疥癬と角化型疥癬に分けられます。
通常疥癬は、疥癬トンネル(雌成虫が産卵しながら角質層内を掘り進んだ跡)といわれる白っぽい線状の皮疹が手足にみられたり、体に赤いブツブツが出たり、男性の陰部に小豆大のしこりが生じたりします。原則として、頭や顔には症状は出ません。かゆみが強く、特に夜に悪化して眠れないこともあります。
角化型疥癬は、高齢で体の弱っている人や重篤な基礎疾患(悪性腫瘍、重症感染症など)がある人、ステロイド薬や免疫抑制剤の投与により免疫能が低下している人などに発症します。ステロイド外用薬の使用により、通常疥癬から角化型疥癬に移行することもあります。カキの殻のように厚く積もった角質が、手足、おしり、膝、肘などの摩擦を受けやすい部位や、通常疥癬では侵されない頭、耳なども含め全身にみられます。全身が真っ赤になったり爪が厚くなったりすることもありますが、痒くないときもあります。
通常疥癬と角化型疥癬では、寄生するヒゼンダニの数が異なります。通常疥癬では数匹ですが、角化型疥癬では数百万匹と多く、感染力が非常に強いです。

疥癬の感染経路

肌と肌の直接接触が主な感染経路ですが、感染して1~2カ月後に症状が現れます。通常疥癬では、寄生するヒゼンダニの数が少なく、人から離れたヒゼンダニは時間とともに感染力が低下しますので、感染が成立するのは密な接触の場合に限られます。一方、角化型疥癬では、ヒゼンダニが多数いるため、直接的な接触のほか、剥がれた角質層が飛散・付着することで感染する場合があります。また、リネンなどの薄い繊維を介して感染が拡大し、集団感染を引き起こすときもあります。

疥癬の診断

顕微鏡やダーモスコープ(ライトのついた拡大鏡)で虫体や卵、脱皮殻、ふんなどを確認し、診断します。確認ができなくても、症状や疥癬患者さんとの接触から疥癬を否定できないときは、間隔をおいて繰り返し検査します。

疥癬の治療

飲み薬のイベルメクチン(2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智博士が開発)と塗り薬のフェノトリン(スミスリンローション)が推奨されています。治療後、ヒゼンダニを検出できず、特徴的な皮疹が出現しない場合に治癒と判断します。皮膚のぶつぶつやかゆみはヒゼンダニに対するアレルギー反応で、治癒後も数カ月間続くことがあります。また、疥癬はいったん治癒と判断されても再発することがあるので、注意深いフォローアップが必要です。

疥癬患者さんとの接触があり、皮膚の症状がみられたときは皮膚科を受診しましょう。

通常疥癬と角化型疥癬では、感染力が異なるため、それぞれとるべき予防対策が異なります。通常疥癬に対して過剰な対応をとらない、角化型疥癬に対して不十分な対応をとらないように気をつけましょう。

ヒゼンダニの弱点
 ・乾燥に弱く、人肌より低い温度では動きが鈍る。
 ・高温に弱く、50℃、10分間で死滅する。

日常生活では、以下の点に注意してください。
通常疥癬の場合は、長時間、疥癬患者さんと肌が直接触れないようにし、患者さんと接した後は手をよく洗いましょう。
一方、角化型疥癬の場合は、患者さんに接するときは予防着や手袋を着用し、直接触れないようにしましょう。落屑(らくせつ=角質が小板状に剥離したもの)にも触らないようにしてください。患者さんと接した後は通常疥癬と同様に手をよく洗いましょう。

解説:坂口 郁代

解説:坂口 郁代
川内病院
皮膚科部長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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