済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
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寒い季節の皮膚トラブルの主な原因は、「気温の低さ」と「乾燥」です。気温の低下に伴う冷えや寒さで、血液の循環が悪くなり、しもやけや網状皮斑(もうじょうひはん)といった血行障害が生じます。また、寒風などにさらされると、皮膚の機能が弱くなって、脂腺や汗腺の働きが低下します。そのため、皮膚の表面が乾燥して、かさつきやかゆみ、あかぎれなどが生じやすくなります。さらに、皮膚のバリア機能は年齢とともに低下。自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること(セルフメディケーション)を心がけることも大切です。
秋から冬にかけて以下のような生活習慣がある人は、皮膚のトラブルに注意が必要です。
・お湯で手を洗う
・熱いシャワーを浴びる
・長湯する習慣がある
・洗剤の原液をつけて素手で食器を洗う
・足が冷えやすい、冷え性
・忙しく、ストレスが多い
・食事が不規則
・睡眠不足
冷え込みが厳しくなると、温かいお風呂に長時間入ったり、熱いお湯で食器を洗ったりすることが多くなります。しかし、お湯は皮膚表面の皮脂を取ってしまうため、バリア機能低下の原因となります。洗剤に含まれる油落とし成分でも、皮脂は奪われます。また、体が冷えやすい人は、血行不良で皮膚に栄養が十分に行き渡らず、皮膚トラブルを起こしやすくなります。どんな病気にもいえることですが、睡眠不足や、不規則でストレスフルな生活は、体の抵抗力を弱め皮膚の回復力を低下させます。
これからの時期に多くなる皮膚疾患を下表にまとめました。
寒くて乾燥する季節だからしかたがないとあきらめず、根気強いケアを心がけ健康な皮膚を養いましょう。
疾患名 | 解説 | 治療法 |
---|---|---|
しもやけ(凍瘡) | 冬の代表的な皮膚の疾患で、寒さによる血行障害が原因で手や指、足にできやすくなる。膠原病の全身性エリテマトーデスや、凍瘡状狼瘡(とうそうじょうろうそう)などでも似た症状が現れるので、たかがしもやけと思わずに注意が必要 | 医薬品のビタミンEで血行を促進 |
網状皮斑 (もうじょうひはん) |
温度の急激な変化によって血管の微妙な調整がうまくいかないために起こる疾患。脚に網目のような紅斑(血管拡張や充血が真皮内に起こり赤くなった状態)ができる。背後に何らかの疾患が隠れていないか調べることが重要 | マッサージや保温で血行を促し、血流を改善する薬を使う |
皮脂欠乏性湿疹 | 皮膚のバリア機能が損なわれ、乾燥して角質がはがれる。皮膚表面のガサガサ、粉をふく、かゆみ、ひび割れによる痛みの発生 | 炎症を起こして湿疹が強いときはステロイド剤、症状が落ち着いた後は、予防のために保湿剤を使う |
あかぎれ | ひび割れが重症化した状態。亀裂が深く、真っ赤に腫れ、何もしていなくても痛みを感じる | パックリ割れた場合は強めのステロイド剤を使って治療 |
貨幣状湿疹 | コイン状の湿疹が脚などに現れる。引っ掻いて崩れたところから分泌物が出て、それが体内に吸収されると自家中毒を起こすことも。湿疹をこじらせることもあるのでしっかり治療することが重要 | かゆみや炎症がひどい場合は、ステロイド剤で炎症を抑える |
尋常性乾癬 (じんじょうせいかんせん) |
慢性的な自己免疫が関与する皮膚疾患。紅斑ができて、次第にかさぶたで覆われ、やがてそれがボロボロとはがれる。冬場に悪化する人が多い | 基本はステロイド剤やビタミンD誘導体の外用薬で治療。難治な場合には、紫外線療法や最先端のバイオ技術によって生み出された生物学的製剤による治療法も注目されている |
低温熱傷 | 湯たんぽ、電気カーペット、使い捨てカイロなどの使用により起こる。短時間の接触では問題とならない温度でも、長時間接触することによって起こる皮膚傷害。放置すると、植皮が必要になるほど深い潰瘍を生じることも | 流水で冷やし、すぐに病院へ。応急処置にはワセリンも有効 |
保湿剤を使って皮膚の乾燥を防ぎましょう。特に、入浴後やお湯での手洗い後は皮脂が取れ乾燥しやすくなっているため、マメな保湿が大切です。かかとのガサガサには、就寝前に保湿剤を塗って靴下を履くことも有効です。保湿作用のある入浴剤も◎。
お風呂では、固形石鹸をよく泡立て身体をなでるように洗いましょう。タオルでゴシゴシと身体を洗うことは気持ちよいのですが、皮膚の角層を傷つけ、皮膚の炎症につながります。ひどい場合は、色素沈着を起こし肌が黒ずむこともあります。
最近の日本の家屋は気密性が高く、エアコンやヒーターなどの温風で室内は乾燥しています。加湿器を上手に利用して、皮膚を乾燥から守りましょう。部屋の湿度を上げることは、風邪やインフルエンザなどの予防にもつながります。
直接肌に触れる下着などは、綿100%のものを身に着けましょう。ナイロンやポリエステルなどの化学繊維は、丈夫で防寒対策にはよいですが、長時間肌に触れると、その摩擦によって皮膚が傷つくことがあります。下着に付いている品質表示をしっかり確認することが大切です。
冬の皮膚を守るためには、日ごろから自分に合ったスキンケアが大切です。ただ、アトピー性皮膚炎などのように、冬場の乾燥が原因でさらに悪化する場合や、ほかの病気が潜んでいる可能性もあります。気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。
日本人の5人に1人が持っているといわれる足白癬(あしはくせん/水虫)。足白癬で皮膚科を受診する人は毎年5月ごろから増え始め、8月後半になると減っていきます。気温・湿度が下がる秋冬になると、症状が治まるため、足白癬は治ったかのように捉えがちです。しかし、白癬菌は冬の間も、皮膚の角層や爪に棲みついているのです。症状が落ち着いている冬場にしっかりと治療することで、夏場の症状悪化を防ぎ、爪白癬への進行を予防することができます。
解説:畑 康樹
横浜市東部病院
皮膚科部長