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2020.12.23

蕁麻疹(じんましん)

hives

解説:中川 浩一 (富田林病院 皮膚科部長)

蕁麻疹はこんな病気

蕁麻疹は、アレルゲン(アレルギーを引き起こす特定の物質)が皮内に入ってくる、あるいは温熱や機械的刺激によって、皮膚の中のマストセル(肥満細胞)からヒスタミンが分泌されて生じます。ヒスタミンは毛細血管を拡張させ、血管内の血漿(けっしょう)成分が皮内に漏出します。毛細血管が拡張することで皮内の血液量が増えて、見た目に皮膚が赤くなります。さらに、血管から漏出した血漿成分によって皮膚が膨れ上がります。蕁麻疹が赤くてぷっくり膨れた、みみず腫れのようになるのはこのような理由によります。皮膚科医はこのような症状を“膨疹(ぼうしん)”と呼びます。

またヒスタミンはかゆみ神経を刺激し、そのため蕁麻疹ではかゆみを伴います。もう一つの特徴として、数時間単位で出没を繰り返します。実際、患者さんが受診されると「昨日は体中にできていたんですが、今はないんです」と言われることもしばしばあります。

蕁麻疹の臨床像(膨疹)

蕁麻疹の検査・診断

みみず腫れ・数時間単位での出没・かゆみの3つの臨床症状があれば蕁麻疹は容易に診断できるため、診断のための検査は必要ありません。
アレルゲンについては、多くの人は「サバ」、「エビ」、「ソバ」などを連想するようですが、実際には特定の食品が原因となって生じる蕁麻疹は全体の1割もありません。空中を浮遊する物質の吸引や機械的刺激、ストレスなどが原因となって起こる慢性蕁麻疹(特発性蕁麻疹)がほとんどです。
患者さんからはよく「検査をしてください」と言われます。採血で種々のアレルゲンに対する抗体(アレルゲンと反応してマストセルを刺激するたんぱく質のIgE)の有無を調べることは可能ですが、特定の食品が原因であることはまれです。

蕁麻疹の治療法

蕁麻疹の治療には抗ヒスタミン剤が用いられます。抗ヒスタミン剤にはいくつかの種類がありますが、ある薬剤が最も有効性が高いということはありません。Aという薬剤がある人には効きますが、別の人には効果がないこともあります。服用してみないと分からないということです。医師は蕁麻疹の患者さんを診察したときに、その患者さんの症状と自分の経験を考慮して薬剤を選択します。効果に乏しいときには薬剤を変更したり、増量あるいは2剤を併用したりという工夫をします。その患者さんに最適な治療薬を決定するには多少の時間がかかります。
抗ヒスタミン剤ではどうしても軽快せず、日常生活にも差し支えるような場合、最近では新しく開発された注射薬が用いられることもあります。症状がつらい場合は主治医に相談してみてください。

蕁麻疹はある日突然生じますので、早期発見ということはありません。かゆいぶつぶつが出るため、自分でも分かります。症状がみられたら、まずは皮膚科専門医を受診してください。

蕁麻疹の多くはなんの原因もなく、突然発症しますので予防することはできません。ただ、家庭環境の変化や、転職などを境に蕁麻疹が現れるようになったり、逆にそれまで毎日のように現れていた蕁麻疹が環境の変化によって全く出なくなったりすることもあります。したがって、ストレスをため込まないようにすることが重要かもしれません。

解説:中川 浩一

解説:中川 浩一
富田林病院
皮膚科部長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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