いよいよ夏も本番、アウトドアを楽しむ季節になりました。みなさんは虫刺されや植物による皮膚のかぶれの対策は万全ですか? たかが虫刺されだと甘く見ていると、命にかかわる場合があります。今回は、大阪府済生会泉尾病院・皮膚科医長の倉澤友輔先生に、アウトドアで気をつけるべき虫・植物や、対策のポイントなどを解説していただきます。
さまざまな症状を引き起こす虫・植物
夏になると、虫に刺されたり、植物でかぶれたりする機会が増えるので注意が必要です。特にハチやムカデに繰り返し刺されたり、かまれたりすると、全身にアレルギー症状が出て、命に危険が及ぶアナフィラキシーを引き起こす可能性があります。レジャーなどの際に注意するべき虫・植物を以下の表にまとめました。
また、アナフィラキシーの詳細については特集記事「あなどるなかれ、ほんとは怖いアレルギー アナフィラキシーにご用心」をご参考ください。
スズメバチ |
●特徴 ・攻撃性が高い ・木の枝、樹木の空洞、土の中などに巣を作る ●症状 ・刺されると激しく痛み、赤く腫れ上がる ・2回目以降は上記に加え、1~2日以内に蕁麻疹(じんましん)を生じる ・繰り返し刺されると、アナフィラキシーを引き起こすリスクが高くなる |
![]() ムカデ |
●特徴 ・昼間は草むらや落ち葉の下に潜む ・夜は屋内に侵入する場合がある ●症状 ・かまれると激しく痛み、赤く腫れ上がる ・アナフィラキシーを引き起こすリスクがある |
![]() マダニ |
●特徴 ・家にいるダニとは全く異なる ・成虫での体長は3~8mm(肉眼で確認できる) ・山や森、河川敷の草むらなどに潜む ・衣服の隙間から入り込み、皮膚が柔らかいひざ裏や脇などをかむ ●症状 ・かまれた瞬間は症状がほとんどない ・2~3日するとかゆみや熱感、軽い痛みを生じることがある |
![]() イラクサ |
●特徴 ・山林の木陰に多く生息する ・茎や葉などにあるとげ状の毛に蕁麻疹を引き起こすヒスタミンが含まれる ●症状 ・毛に触れると赤く腫れ、強い痛みを感じることがある |
![]() ウルシ |
●特徴 ・山林などに生息する ・樹液にアレルギー反応を引き起こすウルシオールが含まれる ●症状 ・樹液が皮膚に付着するとかゆみや水ぶくれを生じることが多い |
症状が出たときの応急処置方法
・スズメバチ・ムカデ
氷や保冷材などで患部を冷やすことで、炎症が広がるのを抑え、症状の進行を遅らせることができます。冷やすと一時的に痛みが強くなる可能性があるので、症状をみながら行ないましょう。

マダニにかまれてから2~3日後
・マダニ
マダニは吸血の際に口下片(こうかへん)と呼ばれる、鉤(かぎ)のように曲がった形をした歯を皮膚に差し込み、さらにセメント様物質を分泌して強く固定します。無理に取ると傷痕が残りやすくなるため、とっさに手で払おうとしないことが重要です。また、指でつまんで取ろうとすると、マダニの体液がかんだ部位から皮膚の中に入ってしまう可能性もあります。一度吸血し始めると1週間程度は皮膚に固定されたままなので、医療機関を受診しましょう。
・かぶれを引き起こす植物
まずは水で洗い流すことです。基本的にかぶれなどの症状はすぐには出ず、数日たってから現れることが多いです。放置すると、やけどのように皮膚がただれて水ぶくれができ、それが破れて傷になってしまう可能性があるので、速やかに病院を受診してください。
応急処置をして数日たっても症状が治まらない場合は、医療機関を受診しましょう。
アナフィラキシーを引き起こした場合は直ちに処置する必要があります。蕁麻疹や腹痛、呼吸困難などの症状が出たら、救急車を呼ぶか、救急外来を受診してください。
アナフィラキシーの既往がある人は、病院で処方されたエピペン(症状を一時的に緩和しショックを防ぐための補助治療剤)を必ず携帯するようにします。なお、エピペンによって症状が落ち着いても、数時間経過してから再度症状が起こることがあるため、必ず医師に診てもらいましょう。
レジャーに出かけるときの注意点
アウトドアでは危険な虫や植物に遭遇する機会が増えますが、なるべく寄せつけないように、服装を工夫しましょう。整備されていない森林や人が通っていない山林には足を踏み入れないなど、遭遇しやすい場所に近づかないことも重要です。

虫・植物から身を守る服装
虫の被害に遭わないために…
ハチに遭遇しても慌てず行動
手で追い払ったり走って逃げたりとすると、敵とみなされて攻撃してくる可能性があります。慌てずに低い姿勢を取って静かに離れましょう。
食べ物や飲み物を放置しない
野外で食事をしたときに、食べ残したものやジュース・アルコールなどの飲み残しを放置していると虫が寄ってきやすくなります。ごみ袋にまとめて密封しましょう。
香水や整髪料はつけない
香料に含まれる成分の中には、虫を刺激したり、引き寄せたりするものがあります。キャンプなどで香水や整髪料をつけるのは控えましょう。
マダニが原因の感染症に注意!
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、ウイルスを保有するマダニにかまれることで感染します。6日~2週間の潜伏期間を経て、発熱や嘔吐、全身の倦怠感などの症状が現れ、皮下出血や下血を引き起こすこともあります。有効なワクチンや治療薬がないため、重症化すると死に至る場合があります(致死率6.3~30%)。2019年6月26日現在、感染者は西日本を中心に全国で434人、そのうち死亡者が66人と報告されています。
マダニにかまれてから6日~2週間後に高熱が出たり、気分が悪くなったりしたら、すぐに病院を受診するようにしてください。
倉澤 友輔
泉尾病院
皮膚科医長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。
※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。
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