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2023.11.29
臼蓋形成不全は、股関節の「臼蓋(寛骨臼)」と呼ばれる骨盤側のくぼみの形成が不十分で浅いため、そこに収まる球状の「大腿骨頭」を十分に覆うことができない病気です。「寛骨臼形成不全」とも呼ばれます。
遺伝的要因、子宮内での胎位異常(頭部が下向き以外の姿勢)、乳児の場合は股関節や膝関節を伸ばしたままにすることなどが病気の原因として考えられています。患者さんの8割は女性です。
骨盤側のくぼみが浅く切り立ったようになっているため荷重が1点にかかり、股関節が不安定になります。若いうちは何とか持ちこたえられますが、年齢とともに筋力が落ちて体重が増えてしまうと、軟骨がすり減って「変形性股関節症」に至る可能性が高くなります。臼蓋形成不全の段階では特に症状を自覚することはありませんが、変形性股関節症に移行すると、痛みなどの症状が出てきます。
また、乳幼児は臼蓋形成不全が原因で脱臼してしまうことがあります。このようなケースでは、生まれながらに臼蓋から骨が外れたり戻ったりしている場合もあれば、乳児期になってから外れてしまう場合もあります。病気の傾向として、関節の柔らかい女児に多いとされています。
小児でも成人でも、最終的な診断はX線検査で行ないます。
また、乳児の場合は日本小児整形外科学会が定めた以下の5項目を確認します。
① 向き癖があり反対側の脚がM字型開脚とならない
② 女児(男児より関節が柔らかいため)
③ 家族に股関節の悪い人がいる
④ 逆子(骨盤位)で生まれた
⑤ 寒い地域や寒い時期(11〜3月)に生まれた(脚を伸ばして衣服でくるんでしまうため)
複数の項目が当てはまる場合は、特に正しい扱い方(股関節の動きを制限しないなど)を心がけ、必ず「3〜4カ月児健診」を受けることをお勧めします。
初期のうちは、どのような使い方をすると痛みが強くなるのか観察し、「日常での痛みを悪化させない使い方」を理解することが大切です。鎮痛薬を使うことも可能ですが、できるだけ調子の悪いときや、どうしても関節に負担をかけなければならないときに限定して使うのがよいと思います。心理的抵抗がなければ杖の使用もお勧めです。
一方、痛みがあると歩くことが減って筋肉が衰えてしまいますので、できれば水中歩行や平泳ぎ以外の水泳を週に2〜3回行なうのも効果的です。運動療法はこれ以外の方法もありますが、痛みが誘発される可能性がありますので、慎重に開始し徐々に強度を高めていくのがポイントです。
これらの保存療法で症状が改善しない場合は、手術を検討します。初期の段階では自分の骨を生かして行なう「骨切り術(こつきりじゅつ)」が適応となり、関節の変形が進行している場合は「人工関節置換術」の適応となります。
初期の段階では、股関節に違和感や脱力感があったり、運動や労働の後に軽い痛みを感じたりします。さらに進行すると、歩行時や動作開始時に痛みを感じるようになります。少しでも股関節に違和感や痛みを感じたら、一度病院を受診しましょう。
小児の場合は、病気解説の「臼蓋形成不全の検査・診断」の項で紹介した日本小児整形外科学会のチェック項目が役立ちます。
関節は再生しませんので、まずは負担を減らして大切に使うことが重要です。また、もし過体重(BMI値が25以上30未満)であればダイエットも検討しましょう。
乳児は本来O脚で、カエルのように股をM字に開いているのが正常です。そのため、おくるみや厚手の衣類などで股関節の動きを制限したり、O脚を直そうと脚を真っすぐに伸ばしたり、タオルを膝に巻き付けたりすると、股関節に悪影響を及ぼします。股関節を自由に動かせるようにしてあげましょう。また、抱っこするときは脚が伸びた状態ではなく、股が開いた状態の「縦抱っこ(コアラ抱っこ)」を心がけてください。横抱っこやスリングの使用は股関節が内股に閉じることが強制されるので、股関節にとってよい状態とはいえません。どうしても使用するときは、股が開くように注意しましょう。
解説:山岡 伸行
富田林病院
整形外科 医療安全管理室室長
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