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2019.04.03

再生不良性貧血

Aplastic Anemia

解説:藤田 浩之 (横浜市南部病院 診療部長・血液内科主任部長)

再生不良性貧血はこんな病気

再生不良性貧血とは、血液中のすべての細胞を生み出す造血幹細胞が減少し、血液中の赤血球、白血球、血小板が減少してしまう病気です。この状態を汎血球減少と呼びます。

赤血球が少なくなると酸素欠乏の症状が起こり、だるさ動悸息切れを感じます。白血球が少なくなると、肺炎などの細菌感染症を起こしやすくなります。血小板が少なくなると、出血しやすくなります。血球の数は減りますが、多くの場合、それぞれの血球の形態や機能などは正常に保たれています。

国の定める「指定難病」の一つで、我が国の罹患数は年間約1,000人と考えられています。

再生不良性貧血の原因

遺伝や医薬品が原因となる場合、肝炎後に発症する場合もありますが、大部分は原因が特定できない特発性の疾患です。特発性再生不良性貧血は、自分のリンパ球(白血球の一種)が造血幹細胞を攻撃するという自己免疫機序によって発症すると考えられています。

※自己免疫機序:異物を認識し排除するための役割を持つ免疫系が、自分自身の細胞や組織に対して反応し攻撃を加えてしまう現象。

再生不良性貧血の診断

検査によって血液中の赤血球、白血球、血小板のうち2種類以上が減少していることが判明した場合、骨髄生検・骨髄穿刺を行ないます。骨髄の細胞密度が減少しており、異常細胞の出現に乏しく、ほかの病気の疑いを除外できて、初めて診断されます。典型的でない場合は診断に時間がかかったり、途中で病名が変わったりすることもあります。

再生不良性貧血の治療

2018年、ガイドラインにあたる「再生不良性貧血診療の参照ガイド」(難治性疾患克服研究事業)が改訂され、重症度分類や標準的(最善と考えられる)治療方針が変更されました。

まずは、減少した血球の種類やその減り方によって重症度(Stage)を分けます。重症度は、血球減少が比較的軽度で輸血も必要としないStage 1(軽症)、Stage 2a(中等症)と、血球減少が中等度以上で輸血を必要とするStage 2b(中等症)~Stage 5(最重症)に大きく分けられます。
Stage 1またはStage 2aでも経過観察とはせず、シクロスポリンによる免疫抑制療法を行なうことが推奨されています。治療の効果が現れず、輸血が必要になるまで進行するようであれば、抗胸腺グロブリンやエルトロンボパグを併用した免疫抑制療法を行ないます。
Stage 2bからStage 5の場合、40歳未満で血縁ドナーがいる患者さんであれば、同種移植が最善の療法です。患者さんが40歳以上もしくは血縁ドナーがいない・移植を希望しない場合は、抗胸腺グロブリンとシクロスポリン・エルトロンボパグ併用による免疫抑制療法を行ないます。

これらの治療と並行して、症状の改善を目的に輸血療法や除鉄療法などを行ないます。
再生不良性貧血の診断・治療には、専門的な知識が必要です。また、治療が長期にわたることもあり、信頼できる患者と医師の関係を築くことも重要です。

早期発見のポイント

貧血による倦怠感息切れ、好中球(白血球の一種)の減少による発熱や肺炎、血小板減少による出血傾向などを自覚し、医療機関を受診する場合もあります。これらの症状はいわゆるかぜ症候群などと区別がつきにくい場合もあります。医師とよく相談し、長引くようであれば採血を希望することも一つの選択です。

再生不良性貧血は定期健診で判明することも多い病気です。健診で異常を指摘され、「要精査」と判定された場合にも早めに医療機関を受診しましょう。

予防の基礎知識

他人に感染することもありませんが、血縁者にFanconi(ファンコニ)貧血や先天性角化異常症の人がいる場合は遺伝する可能性があるので、定期的に検査を受けるなど注意が必要です。また、一部の医薬品や有機溶剤(ベンゼン)を使う場合、放射線曝露を受けた場合も同様です。しかし、再生不良性貧血の大部分は原因が特定できない特発性ですので、特別な予防法はありません。

解説:藤田 浩之

解説:藤田 浩之
横浜市南部病院
診療部長・血液内科主任部長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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