2013.02.01 公開
2025.10.30 更新
乳がん
Breast Cancer
監修:佐藤 隆宣 (東京都済生会中央病院 乳腺外科 部長)
乳がんとは
乳がんは、乳腺組織に発生する悪性腫瘍です。日本では年間約9万人の女性が乳がんと診断されており(※2021年データ)、現在では女性が最も罹りやすいがんとなっています。生涯のうち、約9人に1人の女性が乳がんに罹るとされており、以前に比べてその罹患率は増加の一途をたどっています。乳がんは、まれに男性にも発症しますが、圧倒的に女性に多く見られる疾患です。
乳がんの原因と発症リスク
乳がんの明確な原因はまだ解明されていませんが、以下のような複数の要因が関連していると考えられています。
1. 女性ホルモン(エストロゲン)の影響
エストロゲンは乳腺組織の増殖に関与しているため、このホルモンに長期間さらされることが乳がんのリスクを高めると考えられています。特に以下のような要因がリスクを上げます。
• 初潮が早い(12歳以下)
• 閉経が遅い(55歳以上)
• 初産年齢が高い、または出産経験がない
• 授乳経験がない
• ホルモン補充療法(HRT)を長期間行なっている
2. 遺伝的要因
乳がんは家族歴との関連があります。特に、がんの発生を抑制するタンパク質を作る遺伝子(がん抑制遺伝子)のBRCA1、BRCA2に遺伝子変異がある場合、発症リスクが大幅に上昇し、生涯で乳がんを発症する確率は60~80%に達すると言われています。
3. 生活習慣の変化
以下の生活因子も、ホルモンバランスや免疫機能に影響を与え、乳がんリスクに関与するとされています。
• 食生活の欧米化(高脂肪・高カロリー食)
• 運動不足や肥満
• アルコールの過剰摂取
• ストレスや睡眠不足
乳がんの進行と転移
乳がんは、発症当初は母乳を乳頭まで運ぶ乳管や、乳汁を作る小さな腺房が集まった小葉(しょうよう)と呼ばれる部位にとどまっていますが、進行すると乳管の壁を破り、周囲の組織(間質=かんしつ)に浸潤していきます。さらにリンパ管や血管を通じて、以下のような臓器に転移する可能性があります。
• リンパ節(特にわきの下にある腋窩リンパ節)
• 肺
• 肝臓
• 骨
• 脳 ※比較的まれ
乳がんの分類
乳がんはその性質によって治療法や予後が異なり、主に以下の4つの分子サブタイプに分類されます。
1. ルミナルA型(ホルモン受容体陽性/HER2陰性/低増殖能)
⇒ 比較的活動が控えめでホルモン療法が有効。
2. ルミナルB型(ホルモン受容体陽性/HER2陰性/高増殖能またはホルモン受容体陽性/HER2陽性)
⇒ ホルモン療法に加えて化学療法や分子標的薬が必要になることも。
3. HER2陽性型(ホルモン受容体陰性/HER2陽性)
⇒ 分子標的治療(トラスツズマブ等)が非常に有効。
4. トリプルネガティブ型(ホルモン受容体・HER2すべて陰性)
⇒ 化学療法が主な治療。進行が速く、再発リスクも高い。
乳がんの治療法
乳がんの治療は、患者さん一人ひとりの病状、年齢、体力、希望などを考慮し、複数の方法を組み合わせて行ないます。
1. 手術療法
• 乳房部分切除術(乳房温存術)
乳房の一部だけを切除する方法。がんの広がりが限定的な場合に選択されます。
• 乳房全摘術
乳房全体を切除する方法。がんが広範囲に及ぶ場合や、複数の病巣がある場合に行なわれます。
• センチネルリンパ節生検/郭清(かくせい)
転移の有無を調べるために、腋のリンパ節を部分的に、または広く切除します。
【オプション】乳房の再建手術
乳房全摘術を行なった場合、乳房再建手術を希望することができます。再建手術には以下のような方法があります。
• インプラント(人工物)による再建
シリコン製の人工乳房を皮膚や筋肉の下に挿入します。比較的短時間の手術で済み、身体への負担が少ないのが特徴です。
• 自家組織による再建
お腹や背中の筋肉や皮下脂肪など、自分の組織を使って乳房を再建します。より自然な形や柔らかさが得られますが、手術時間が長くなり、大きな傷が残ります。
• 一次再建と二次再建
乳がん手術と同時に行なう再建を「一次再建」、後日改めて行なうものを「二次再建」といいます。術前の病状や治療計画(術後の放射線治療の有無など)を考慮して選択されます。
2. 放射線療法
主に乳房温存手術後に再発を防ぐ目的で行なわれます。また、骨転移などの痛みを緩和するためにも使われることがあります。
3. 薬物療法
がんの性質に応じて、以下の治療が行なわれます。
• ホルモン療法(内分泌療法)
エストロゲンの働きを抑える薬(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬など)
• 化学療法(抗がん剤)
再発リスクが高い場合や3つのホルモン受容体(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2)がすべて陰性のトリプルネガティブ型に多用
• 分子標的療法
HER2陽性乳がんに有効(トラスツズマブ、ペルツズマブなど)
• 免疫チェックポイント阻害薬
最近ではトリプルネガティブ型の乳がんに対して一部で使用されている
乳がんの予後と生存率
早期に発見された乳がんは治癒率が高く、5年生存率は90%以上と言われています。しかし、進行度が高いと再発や転移のリスクが上がり、治療も難しくなります。
乳がん予防と早期発見のために
乳がんは自己触診、定期的な検診、画像診断(マンモグラフィ、超音波検査)によって早期に発見できるがんです。40歳以上の女性は、2年に1回のマンモグラフィ検診が推奨されています。
また、以下のような習慣もリスクを下げると考えられています。
• 適度な運動
• 適正体重の維持
• バランスの取れた食生活
• アルコール摂取の制限
• 授乳経験(特に長期間の授乳は保護効果がある)

監修:佐藤 隆宣
東京都済生会中央病院
乳腺外科 部長
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