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2020.11.18
月経困難症とは、月経(生理)の期間中に、月経に伴って起こる病的症状のことです。何らかの原因となる病気があることで起こる器質性月経困難症と、原因となる病気がない機能性月経困難症があります。
器質性月経困難症は、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症あるいは子宮の形の異常などの病気が原因となります。月経中以外にも痛みが起こる場合があります。
機能性月経困難症は、月経の血液を排出するために子宮を収縮させる物質であるPG(プロスタグランジン)の分泌が多すぎて子宮が収縮しすぎることや、頸管(子宮の出口)が狭いことが痛みの主な原因です。大部分の月経困難症がこれにあたり、初経を迎えた2~3年後から起こることが多いです。
器質性、機能性いずれの場合も症状で最も多いものは、月経時の痛みです。腹痛や腰痛のほかに、肛門周囲に痛みを感じることもあり、子宮内膜症や子宮腺筋症を合併する場合に多くみられます。
症状の種類や強さ、出現時期を確認(問診)してから、必要に応じて内診や超音波検査、血液検査、細菌培養、クラミジア抗原検査、画像検査(MRIやCT検査)などを行ない、月経困難症の原因となる病気の有無を調べます。これらの情報を総合的に判断して治療法についての検討を行ないます。
器質性、機能性いずれの場合も痛みの原因にはPGが関わっており、その産生を抑える鎮痛薬(非ステロイド抗炎症薬)を使用します。そのため、一般的に痛くなる前に内服するほうが効果的です。
鎮痛薬で痛みが軽減されない場合にはホルモン剤を用いて月経を調節したり、月経痛の原因となる病気をコントロールしたりすることで症状を改善します。低用量ピルが最も多く使われ、保険適応となっているものがあります。最近では痛みの日数を減少させる効果があるので周期投与よりも連続投与が勧められるようになりました。
また、黄体ホルモン剤や、GnRHアゴニスト(卵巣の働きを抑制する薬)なども使用されます。それぞれの治療で期待される効果や副作用などは異なるので、治療の内容をよく理解してから選択することが大事です。
なお、思春期の機能性月経困難症の中にはブチルスコポラミンなどの鎮痙剤(ちんけいざい)が有効な場合があります。
以上の薬以外に漢方薬で効果的に治療できる可能性があり、痛みなどの症状に加え、体質なども考慮したうえで漢方医学的な診断により漢方薬が選択されます。
機能性月経困難症でこれまでに述べた保存的な治療(手術を行なわない治療法)で効果がなければ、心理や社会的背景が関係している可能性があり、カウンセリングや心理療法が考慮される場合があります。
子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症などによる器質性月経困難症の場合には、それぞれの病気に対する適切な治療を行ないます。
月経困難症の大部分は原因となる病気のない機能性月経困難症ですが、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症あるいは子宮の形の異常などの病気が原因の場合(器質性月経困難症)があります。
市販の鎮痛薬を服用しても痛みが強い場合は、産婦人科を一度受診することをお勧めします。
器質性月経困難症の原因となっている病気を早期に発見し治療することで、重症化を予防できる場合があります。
解説:左右田 裕生
兵庫県病院
副院長・診療部長・医療安全管理室長
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