済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
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2023.04.05
コルサコフ症候群は、主にアルコールの多飲に伴うビタミンB1欠乏によって生じるウェルニッケ脳症の後遺症として発症する認知症です。この病気について報告したロシアの精神科医セルゲイ・コルサコフにちなんで病名が付けられました。
ウェルニッケ脳症と併せて、「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」とも呼ばれますが、ウェルニッケ脳症は発症せずに(もしくは気づかずに)認知症として受診し、コルサコフ症候群と診断されることもあります。
アルコールの多飲だけでなく、低栄養・消化管の切除・透析などによって、脳の活動に必要なビタミンB1が欠乏し、ウェルニッケ脳症を経てコルサコフ症候群を発症することもあります。
ウェルニッケ脳症は早期の適切な治療により改善が期待できますが、コルサコフ症候群に移行すると回復は望めません。
記銘力障害(最近の出来事を記憶できない)、失見当識(時間や場所など自分が置かれている状況が理解できない)に加えて、作話がみられます。
作話とは記憶障害の一種で、自分が覚えていない記憶を補おうとしたり、誤った記憶をつなぎ合わせたりして無意識に話を創作することです。本人は嘘の話をしているという意識はなく、相槌を打つなどの会話スキルが保たれている場合もあるため、初対面では作話であることに気づかないこともあります。
コルサコフ症候群に特異的な血液検査や画像診断はありません。そのため、患者さんの症状や経過、アルコール多飲歴などを聞いて判断します。また、他の認知症との鑑別も必要です。
アルコールの多飲が原因のコルサコフ症候群の場合は、慢性アルコール中毒の症状であるふるえやふらつき、しびれなどを伴うことも多く、それらも診断の参考となります。
残念ながら、コルサコフ症候群の症状改善に有効な治療法はありません。コルサコフ症候群になる前のウェルニッケ脳症の段階で治療をすることが大切です。
コルサコフ症候群は不可逆的な認知症であるため、その前段階で気づくことが重要です。アルコール依存があり、偏食や食事摂取量の減少がみられる場合はさらに注意が必要です。
ふらつきやいつもと異なる様子がみられた際は、コルサコフ症候群の前段階であるウェルニッケ脳症の疑いがあります。ウェルニッケ脳症の治療は早ければ早いほど効果があるため、疑われる場合は速やかに受診してください。
アルコール依存や偏食がある人は、その生活習慣を改めることが一番望ましいです。それが難しい場合は、ビタミンB1のサプリメントを予防的に内服することをお勧めします。
解説:黒野 裕子
神奈川県病院
脳神経内科部長
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