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2019.04.10
新生児肺炎とは、新生児が罹患する肺炎のことです。肺炎自体は年齢にかかわらず発症する病気ですが、特に新生児は免疫学的に未熟であるため重症化する傾向があります。
新生児肺炎の原因菌として多いのは、新生児敗血症と同じくB群溶血性連鎖球菌(GBS)ですが、大腸菌、リステリア、ブドウ球菌、肺炎桿菌(はいえんかんきん)なども原因となります。ウイルスによる先天性肺炎はまれですが、出生後にRSウイルスなどにより肺炎をきたすことがあります。
敗血症に伴って発症することが多く、生後72時間以内に発症する場合を早発型、それ以降に発症する場合を遅発型といいます。早発型の場合、新生児が仮死状態で出生することもあります。
胎内で母親の血液から胎盤を介して原因菌に感染したり、腟から子宮に感染がおよんだりして胎児に感染して出生すると、敗血症に肺炎を併発して出生時から呼吸障害がみられることが多くなります。また、分娩時に母体の産道(子宮から外陰部にかけての範囲)で感染すると、生後間もなく肺炎を発症します。水平感染といい、出生後に周囲の環境や人から感染するケースもあります。
産科入院中に水平感染により肺炎を発症することはまれですが、退院後にさまざまな細菌やウイルスにより発症する可能性があります。原因菌に感染すると、次のような症状が現れます。
・呼吸数増加(毎分60回以上)
・鼻翼呼吸(鼻の両側のふくれた部分が規則正しく繰り返し動く)
・陥没呼吸(喉の下や胸がぺこぺこする)
・チアノーゼ(口唇などが紫色になる)
・哺乳力(母乳やミルクを飲む力)の低下
・無呼吸
・発熱
・体温低下
新生児敗血症の治療に合わせて、早発型、遅発型で症例が多い起炎菌を想定し抗生物質を使用します。重度の呼吸障害がある場合、酸素使用、人工呼吸器管理、一酸化窒素吸入療法などを行ない、呼吸不全を抑える必要があります。
出生時から敗血症を合併している場合、仮死状態に呼吸困難を伴っていることが少なくありません。出生時の呼吸障害は肺炎以外の疾患でもみられます。特にGBSは早産の原因にもなり、レントゲン写真が早産の新生児に多い呼吸窮迫症候群や一過性多呼吸のものと類似していることがあるため、鑑別が重要となります。
産科退院後に発症すると、先述のとおり呼吸数増加、鼻翼呼吸、陥没呼吸、チアノーゼ、哺乳力低下、無呼吸、発熱、体温低下などの症状が認められます。新生児が発熱すると原則入院となりますが、新生児の重症感染症では発熱がみられないこともあるため、「なんとなく元気がない」など気になることがあれば早期に受診しましょう。
RSウイルスに感染した場合、せき、鼻汁、呼気時の「ゼーゼー」とした音、多呼吸、陥没呼吸などがみられます。しかし、新生児は呼吸を止めてしまう無呼吸になることがあるので、呼吸状態をよく観察することが大事になります。
GBSを保菌している妊婦さんには予防的に抗菌薬が投与されるため、新生児のGBS感染症発生率は低下してきています。ただし、新生児GBS感染症の約半数は母体が原因ではないので、保菌していないことがわかっても油断はできません。新生児への原因菌の感染経路は、①母親の血液から胎盤を介して感染、②分娩時に産道で感染、③周囲の環境や人から感染―のパターンがあります。そのため、新生児の感染を防ぐためには、母体の検査だけでなく接する人の手指衛生も重要です。
RSウイルス感染症は早産児のほかに、先天性心疾患やダウン症候群、免疫不全症などをもつ場合に重症化することがあるので、これらの新生児(早産は在胎35週以下)には、保険適応で重症化予防を目的にパリビズマブという薬が投与されます。年長児や成人がRSウイルス感染症を発症すると、鼻風邪のような症状のみ現れる場合もあるので、風邪症状のある人は新生児に近づかない配慮も必要です。RSウイルスは感染者の鼻汁やせきなどで菌が付着した手指、衣類などから感染するので、GBSと同じく手指衛生が予防のポイントとなります。
解説:新井 順一
茨城県立こども病院
副院長
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